◇あいことば４ ページ40
・
懐かしいなと思って、汚れが増した壁に触れたら
・
建物の影から、誰かがこちらに来る気配がして
咄嗟に死角になりそうな場所に逃げ込む。
・
誰だ？と思って、顔を上げたら
微かに春の匂いがする風と共に、いつか見た光景と同じように
黒い髪が揺れているのが...目に入る。
・
心が赴いた。記憶が、走馬灯のように巡る
・
「ごめん！待った？」
「ピッタリ15分後….」
「あは、俺天才(笑)」
・
あの頃よりも、なんだか大人びて見える彼女の元に翔ちゃんが走ってきて
俺が託した紙袋を、渡した。
・
しゃがんで、中身を開ける指が震えていた。
風に吹かれる髪を耳に掛けたら、初めて出会ったあの日みたいに心が揺れる
・
中に忍ばせた俺の手紙を見た彼女は、聞いたことがないほど大きな声をあげて泣いて
その場に崩れ落ちてしまった。
・
いますぐ、飛び出したかった。
無責任に、抱きしめてあげたかった。
・
でも、彼女は俺が思ったよりもずっとずっと強くなっていた。
・
「….無理言って、ごめんなさい」
「大丈夫。俺も悪い」
「全然です…。たくさん迷惑かけてすみませんでした」
「ううん、これからも頑張れよ」
・
優しいオルゴールの音色を止めて、彼女は涙を拭った。
・
ちゃんと別れを告げて、彼女が歩き出した時に
死角にいた俺を…翔ちゃんが見つけた。
・
「お前！！来てるなら行ってやれよ！！」
「ダメだって」
・
彼女に聞こえないように、小声で言い合う
・
「俺が今行ったら、全部台無し
…あいつが自分で選んだ道なら、行かせてやるのが、一番いいよ」
・
そうやって、強がった自分
・
本当は、彼女に掛ける言葉が
全て涙に変わってしまうことを悟っていたから。
どうか、彼女の記憶の中で…俺がいい形で残れていますように。
・
そう願って、遠ざかる後ろ姿に手を振った。
・
その後、何年も経ってから彼女が俺を追い掛けてきて
色々あったのは想定外だったけれど、お互いに一番いい形で終われたと
今では、心の底から思っている。
・
「…..そうなんだ」
・
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moma(プロフ) - 最後思わず泣いてしまいました。とても素敵なお話ですね。お疲れ様でした。 (2019年10月6日 12時) (
レス) id: 48200bde74 (このIDを非表示/違反報告)
おおみやえすけー - なんというか、プロです！想定外の終わり方！感動しました。いいお話でした！ (2018年5月27日 13時) (レス) id: 3c6cfab666 (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - はじめまして。今更ながら作品を読ませて頂きました。もう胸が苦しくて切なくて…。特に二宮さんのお返事には何度も何度も号泣してしまいました。この作品はずっと心に残っていくと思います。本当に好きな作品です。ありがとうございました。 (2017年12月31日 5時) (レス) id: 1b3c0cf73c (このIDを非表示/違反報告)
雅(プロフ) - とても面白かったです！ (2017年9月19日 2時) (レス) id: 40edc2cacc (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - はじめまして。この作品を見つけてシリーズの最初の作品を読んだら時間なんて忘れてモヤモヤしながら夢中で読ませて頂きました。ほんとに鳥肌が立つくらい良い作品でした、読み終わった時の感情は言葉に出来ないですけどこの作品に出逢えてよかったです(*´ω｀*) (2017年6月23日 10時) (レス) id: d8eea5bcd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：.
| 作成日時：2017年3月4日 22時
