”記憶の間“ 豹変 ページ5
魅「う˝っ…ぉえ˝ぇぇッッっ！！」
びちゃびちゃと血液と胃液が混じったものが、床に吐き出される。
ケーキと、プレゼントと、狂子にまで飛び散るそれ。
『…え…？』
魅「ごほっ！う˝っぉ˝、ゲホッ！！」
『…っ、魅姫さんっ！？』
酷く苦しみ悶え、血を吐き出し続ける魅姫に狂子は我に返った。
万が一の備えで取り付けられていたナースコールを押し、
また自身も突然病状が悪化…した魅姫の手当てに勤しんでいた。
だが実母だけは、ただ笑って見ているだけだった。
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その後、魅姫は掛かり付けの病院に入院した。
持病悪化の原因は、ケーキに入れられた微量の即効性の毒。
微量だったからこそ何とか対処出来たのだが、致死量ならほぼ助からなかった。
…だけど毒が入れられたそのケーキは狂子が事前に食べていた物だった。
毒入りの物と入れ替えるなんて事も出来ない。
抑も監視カメラにすらそんな様子は無かった。
一体犯人は誰なのか。
それを考える前に本人が名乗り出たのだ。
「あー何だ…死ななかったのね、あの子」
『…は？』
母の呟きに、狂子は振り返る。
「折角私が楽に逝ける様にって強いのを入れてあげたのに…」
『…母さん？』
「あ、そうだ！ねぇ狂子ちゃん、次は狂子ちゃんが食べさせてあげて！
あの子は狂子ちゃんに懐いてるからきっと食べてくれるわ！」
さも協力してくれると言わんばかりの言葉に狂子は唖然とした。
『な…何言ってるの…っ！？家族が、義理の妹が死にかけたのに！？』
「うん、だから死なせてあげようと思って」
『自分が何言ってるのか分かってるの！？今回は運良く助かったけれど、
一歩間違えれば死んでいたんですよ！？それだけじゃない！今回の件で
彼女の病気が悪化したら…！』
「でも別に死ねるならいいじゃない」
「だってその子、病気治らないんでしょう？」
「だったら生きていたって苦しいだけじゃない」
「お金も無駄になっちゃうし、いっそ楽にしちゃおうかなって！」
「狂子ちゃんには悪いんだけど、これも可愛い妹の為だもの」
「何より、私がそう決めたんだから…仕方ないでしょう？」
その直後、狂子は母を殴っていた。
否、もう限界だったのだろう。
狂子の中で今までの日々が完全に壊れていく音がした。
洗脳が、解けたのだ。
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作者名：徒花(腐女子) | 作成日時：2020年12月7日 12時
