標的72 ホームラン−２ ページ36
麗羅視点
配置に付いていた選手達が入れ替わる。
その時、バッターボックスに立ったのは山本君だった。
それに一早く気が付いたツナ君が「山本だ！」と指を差すと、全員がバッターボックスに視線を向ける。
声援を送る京子さんハルさんの間から、ビアンキさんに名前を呼ばれた。
同時に振り返った獄寺君が昏倒したのを心配に思いながら、「はい？」とビアンキさんと目を合わせた。
｢これ。もしかしたら もしかするかもしれないから、嵌めておきなさい｣
そう言って手渡して来たのは、グローブだった。
何がもしかすると観客のあたしにグローブが必要になるのかは不明だが、取り敢えず言われた通り左手に嵌めておく。
山本君がスタンドにバッドの先を向けた。
立っている向きから、その先は偶然にも此方を向いている。
大きく振り被ってピッチャーがボールを投げた。
凄まじいスピードで駆け抜けて行くボールを、山本君はバットの中心でしっかり受け止め、大空へとかっ飛ばした。
大きな歓声が巻き起こる場内を横断し、ボールが真っすぐ此方へ向かって来る。
近づいて来たと思ったボールが、あたし目掛けて降って来る。
反射的にグローブを構えると、まるで吸い込まれたようにボールがそれに納まった。
ビアンキさんの言っていた『もしかしたら』とは、こう云う事か。
獄寺君も先程、野外ホームランについて話していた。
にしても本当に山本君のホームランボールを取ってしまうとは、今日のあたしは運が良いのかもしれない。
｢流石 山本！ しかも それを麗羅がキャッチするって、凄過ぎ！｣
｢うんうん。麗羅ちゃん、良かったね！｣
興奮気味のツナ君に、京子さんが大きく頷く。
あのリボーン君も「山本やるな」と絶賛し、うっとりとビアンキさんも頷いていた。
幾ら山本君の腕が良いとは云え、ホームランを、それも特定の場所に向かって狙いを定めて打つなんて故意には出来ない筈だ。
それなのにグローブの中のボールを見ていると、何故だか これが偶然では無いかもしれないと思えた。
バッターボックスに視線を向けると、満面の笑みを浮かべた山本君と目が合った気がして、あたしはキャッチしたボールを向けて笑みを返した。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年10月19日 17時
