標的69 エンジェル・トランペット−２ ページ29
山本視点
静かだった麗羅が、ナハトの話が終わったのと同時に再び棍を振り回した。
麗羅が足元を掬うように棍を薙ぎ払う。
俺はバックステップでそれを避け、何度も麗羅の名を呼ぶ。
それでも、麗羅は黙ったまま殺気を放って、棍先を突き付けて来た。
日本刀で受け止める。
キン、と云う金属音が響く。
「しっかりしろ！」「俺だぜ！」俺が幾ら声を掛けても、麗羅の攻撃は休まらない。
それを愉快気に見ていたナハトが、「それからね、」と冷たい声を発した。
｢僕はナハトじゃ無い、ナイトだ。
よく見てみろよ、このチョーカー！
ナハトのは黄色、僕のは赤！｣
ナハト……いやナイトは、自分の首を指差した。
黒い首に付いているのは、本人の言う通り赤。
そう云えば、ナハトは黄色の物を付けていたような気がする。
気がするだけで、チョーカーの色なんて全く覚えていないが。
｢言われてみりゃ、そうかも知んねーな。
双子か？｣
｢山本武、お前は聞いていた通りいけ好かない奴だ！
僕はナハトが大っ嫌いだし、間違われるのはもっと嫌いだ！
しかも、こんな状況で呑気にしやがって。
この僕を馬鹿にしてんのか！？｣
｢え？ いや、そう云うつもりじゃ無かったんだけどな｣
俺の態度が気に食わなかったらしく、ナイトは顔を真っ赤にして がなり立てた。
「山本武をぶっ殺せ！」
ナイトの掛け声で、麗羅が地面を蹴った。
今までより動きが機敏になり、一撃一撃が重くなる。
俺は五月雨の如く素早い動きで突いて来る棍先を避け、脳天目掛けて振り下ろされた棍を日本刀で受けた。
ぐ、と重くなったと思えば、棍を軸にして麗羅が宙を回って視界から消えた。
そして背中を力強く蹴られて、俺は前につんのめる。
後ろを向くと、麗羅が大きく棍を振り被っていた。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年10月19日 17時
