標的60 血の臭い−３ ページ3
麗羅視点
城島は突然「あれ？」首を傾げて、くんくんと鼻を動かした。
そしてご機嫌だったのが一遍、面倒だと言わんばかりの溜息を吐いた。
そんな城島に見つめられる意味が分からない。
｢お前の血の臭いの中に、微かに骸さんの血の臭いも混ざってるびょん。
骸さんの言ってた『探し人』って、お前の事だったんらな｣
『六道骸の血の臭い』そう指摘され、ボクははっとしてハーフパンツ――マントの下に履いている――の隠しに手を突っ込んだ。
隠しの中には、精神界で六道骸から強引に渡された『六道骸の血』が付いた包帯が入っていた。
返そうと思って持って来ていた物だが、まさか ずっと前に付着した血の臭いを嗅いだと云うのか。
「そうだ」とも「何の事だ」とも言えず、状況の分かっていない山本を放ってボクは唖然として城島を眺めた。
｢『生きたまま捕獲しなさい』らっけ？
面倒くせーけど、骸さんの命令なら仕方無いびょん。
抵抗しないでねー、ちっこいの。
怪我したく無いんならっ｣
地を蹴って城島が此方に走り寄って来たと思えば、そのまま通り過ぎて反対側の壁に着地し、そして先刻の比にならない速さで襲い掛かって来た。
『変化(カンビオ)』の呪文を唱え、ボクが棍で防ごうとすると……目の前で、山本のバット――ヘッドスピードが時速三百キロメートルを超えると日本刀に変形する特殊なバット――で、城島の攻撃を受け止めていた。
衝撃に耐えられなかった刃は折れて宙を舞い、壁に突き刺さった。
｢山本のバットが！｣
｢お前、邪魔だびょん。退いてくんない？｣
｢それは無理な話だな。
コイツはぜってぇ渡さねぇ。俺が守るって決めたんだ｣
ボクを庇って立ちはだかる山本の背中が、珍しく殺気の含まれた声が、強い意志の籠った言葉が、とても頼もしかった。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年10月19日 17時
