標的63裏 黄のチョーカーをした猫 ページ12
リボーン視点
ビアンキがＭＭを倒す少し前。
麗羅達の後ろにある樹の枝に、一匹の黒猫が止まった。
黒の毛に黄の首輪を付けている猫は特に何をするでも無く、ゆっくりと尻尾を振って戦いを見下ろしていた。
幻覚で無ければ、殺気も放っていない。
何処をどう見ても唯の黒猫だった。
しかし、ＭＭが倒された後……黒猫は小さく光を放ちながら大きくなり、光が消えた時には、追加で見せた写真に写っていた男――ナハトになっていた。
「にゃあ」と鳴いて自己を主張したナハトは、麗羅の正面に着地する。
一定の距離を置く獄寺と山本、その後ろで小さくなっているダメツナ。
麗羅は奴らとは違って、ナハトが正面に現れても尚 距離を置こうとしなかった。
｢君はボクが倒さなきゃいけないんだ｣
その一言からは、麗羅の強い使命感が伝わって来た。
刺客が城島犬と柿本千種と六道骸の影武者だけでは無いと当てた『物語』では、ナハトとは麗羅が戦う事になっているのか。
俺は一度そう考えたが、果たして本当にそうなのかと考え直す。
麗羅は三人以外にも刺客がいると言い当てたのに、俺が四枚の写真を見せると、顔が隠れても分かる程に動揺していたように見た。
それはナハトが現れた時も同様で、もしかするとナハトは『物語』に存在していなかった可能性がある。
とは云え、これは俺の推測の域を越えない。
俺は『物語』を信用していないが、麗羅は『物語』は絶対だと信じている。
それで先程の強い使命感。
やはり『物語』では麗羅が戦う事になっていると考えるのが自然か。
ナハトが愉快そうに目を細める。
それから素手に死ぬ気の炎を灯され、俺はほんの少しだが驚いた。
死ぬ気の炎を灯す事自体が難しいのに、武器も専用のグローブも無く灯すとは。
ナハトは只者では無い。
麗羅を捕らえられなかったナハトの拳は、彼女がいた地面を強く殴った。
雑草が茂っている場所だったから、死ぬ気の炎がよく燃える。
すると、麗羅とナハトを囲むように、周りの樹々がドーム型に急成長し始めた。
それは ほんの一瞬の出来事で、俺は咄嗟に「麗羅！」と叫んだツナの背中を蹴って中に入れようとしたが、ツナは太い幹に弾かれてしまった。
「どうなってんだ！？」とは獄寺の言葉。
俺達は樹々の隙間から中の様子を窺った。
｢一対一でやるんだろ？ 早くやろうぜ｣
ナハトは再び拳に黄色の死ぬ気の炎を灯した。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年10月19日 17時
