標的60 血の臭い−１ ページ1
麗羅視点
「此処だ」先頭を歩いていたリボーンが立ち止まり、ボク達も足を止める。
右手側にある錆びれた大門の向こうには、林と土砂に囲まれた廃墟があった。
幼い頃に来た事があると云う主君の朧げな記憶によると、『黒曜ランド』と呼ばれていた此処は、カラオケや映画館、動植物園が入った複合娯楽施設だったらしい。
「夢の跡って訳ね」とビアンキに呟かれた言葉は、何と無く寂しい印象を持たせた。
ポイズンクッキングで大門の南京錠を溶かして、ボク達は黒曜ランドへ足を踏み入れる。
警戒する主君や獄寺、リボーンとビアンキが慎重に歩を進める中、未だ遊びだと勘違いしている山本の足取りは軽い。
舗装されていない地面を、サンダルと云う場違いな履物で踏んで行く山本のすぐ隣をボクが歩く。
最初の刺客はどの方向から来る？
神経を尖らせていると、後ろから爆音がした。
段々と近くなって来る爆音に、ボク達全員は前へ前へと走る。
素早く無い主君の後ろを走る山本の更に後ろ、つまり殿をボクが務める。
そうして斜め前の木陰から何者かが飛び出して来たのが見えて、ボクは「危ない！」山本に叫んだ。
何者かに襲い掛かられて、山本は転がりながら瓦礫も土砂も無い真っ新な地面を踏み抜いた。
そう、踏み抜いたのだ。
地面が崩れて、体勢が悪いままの山本が落ちる。
ボクは咄嗟に左手で山本の腕を掴んだ。
しかし、ボクが立っていた場所も崩れてしまい、ボクは自分と山本の体重を右手一本で支える姿勢になってしまった。
しかも、ボクが掴んでいるのは地面では無く、その下に埋もれて隠れていた動植物園の屋根だ。
｢リボーン、ビアンキ、獄寺君！ 山本達が！｣
ボク達に気が付いた主君が、前を走っていた三人に声を掛けた。
慌てて駆け戻って来た獄寺がボクを上げようとしたのと同時に、限界に達したボクの右手が離れて、ボク達は真っ逆様に落ちてしまった。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年10月19日 17時
