標的66 大切なもの−４ ページ24
麗羅視点
死ぬと思っていたのに、五体満足で生きている。
それに安堵して力が抜け、死ぬ気の炎を大放出した倦怠感と、少し治まったとは云え継続している痺れがどっと押し寄せて来る。
崩れ落ち、そのまま遠のきそうになった意識は、身体が必要以上に酸素を求めた苦しさによって強制的に引き戻された。
｢麗羅も樹と一緒に燃えるかもしれなかったんだよ！
また皆で笑い合いたいから骸倒しに来たのに、麗羅がいなかったら意味無いじゃん！｣
――何の為に戦ってると思ってるんだよ！
また皆で笑いたいのに、君が死んだら意味が無いじゃないか！
ツナ君が凄まじい剣幕で怒鳴った言葉は、『物語』にあった未来のツナ君の言葉に重なった。
あれはあたしに対しての言葉では無いけど、今あたしが怒鳴られた理由は一緒。
自分の命を大切にしなかったからだ。
あたしは兎に角、ナハトさんを倒す事しか考えていなかった。
その先の事を何も考えていなかった。
『何の為に戦っているか』
ツナ君や皆は『また皆で笑い合う為』だが、果たして今までの あたしは そうだっただろうか。
確かに それもあったけど、あたしの一番の理由は、そんな純粋で綺麗な気持ちでは無かった。
あたしは唯、『物語』に沿って戦いに来ていた。
だからあたしは一人で戦う事に拘り、山本君の協力を断った。
あたしは必要以上に『物語』を気にしていたんだ。
今、リボーン君が未来を聞いて来なかった理由が少し分かった気がする。
未来が分かる事は大きなアドバンテージだけど、それに執着してしまったらダメなんだ。
『物語』の通りに動くと云う事は、自分の意思で動く事を放棄する事と同義で。
自分の意思で動く事を放棄したら、本当にしたい事を、大切な物を見失ってしまうんだ。
あたしにとって大切な物。
それはツナ君達と同じ、『皆との日常』だ。
涙が零れそうになり、痺れる腕を動かして顔を隠した。
ずず、と鼻を啜る。
優しい声色の獄寺君に手を添えられて、あたしは徐に腕を下ろした。
｢もう あたしは大丈夫。
だから、また戦わせて下さい｣
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年10月19日 17時
