標的58 変えられない−２ ページ25
麗羅視点
「ツナ！」追い付いて来た山本が、主君に手を差し伸べて立ち上がらせた。
柿本は山本をじっと見つめ、「そうか」と納得した口調で眼鏡を押し上げる。
｢お前は並盛中一年Ａ組、山本武｣
｢だったら何だ｣
｢お前は犬の獲物。揉めるの面倒……｣
柿本は重そうに足を引き摺らせ、去って行った。
ボクは携帯電話を取り出し、『１１９』のボタンを押す。
山本は獄寺の肩に手を置き、「しっかりしろ！」と虫の息になっている獄寺に呼び掛けていた。
主君は膝を付いて、重傷の獄寺を呆然と見守っていた。
口には出さなくても、青ざめた顔に『俺のせいで』と書いてある。
主君は自分を責めているようだった。
携帯電話を仕舞い、ボクは主君の頭をそっと撫でた。
｢主君のせいでは無い。
獄寺も死なない。すぐに救急車が来る｣
最初の言葉以外は、ボク自身に向けた言葉だった。
ボクは知っていたんだ、こうなる事を。
それなのにボクは、獄寺を助ける事が出来なかった。
主君を助けるのだって、別にボクが行動しなくても山本がしていた。
ボクは知っていた癖に、何も変えられなかった。
悪いのは主君では無く、ボクだ。
主君から離した拳を握る。
ぐっと奥歯を噛み締める。
そうしたら、握っていた拳が主君によって解かれた。
｢君のお陰で助かったよ。
ありがとう！ 山本の友達？｣
やっぱり赤の他人にも優しくしてくれる主君に、ボクはフードを外してみせた。
｢ごめんね。もっと早く駆け付けていれば、獄寺君も怪我しなかったのに｣
｢えっ、麗羅！？｣
ツナ君が目を白黒させる。
フードをしていると声が変わるから、気が付かなくても無理は無いのだけれど。
マントを脱いで折り畳む。
フードに変成器が付いている事を説明すると、ツナ君と一緒に山本君まで驚きながら感心していた。
マントを着る処を見ていた山本君は勿論知っていた筈だが、「気になってたけど訊けなかった」と言われたら謝るしか無かった。
あたしが焦っていたから、自重してくれたのだろう。
救急車が近づいて来る音がする。
何時からいたのか、リボーン君がぴょんと山本君の肩に飛び乗った。
｢並盛中の保健室に行くぞ。
事情は其処で話す｣
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年8月29日 9時
