標的54 俺はお前が……−２ ページ18
山本視点
――あ、ツナ兄と武兄だ！
お店出してるって事は、花火見ないの？
僕、折角花火の隠れスポットのランキングだしたのに。
――隠れスポットのランキング？
――うん。一位は神社の拝殿だよ。
他の灯りが無いから、凄く綺麗なんだ。
お店終わったら誰かと見に行くと良いよ。
二人共いるでしょ？ 一緒に見たい女の子。
通りすがりにチョコバナナを買って行ったフウ太が置いて行ったランキング。
ツナは俺に、麗羅と二人で花火を楽しむように言ったかったのだ。
ツナ達を追おうとした麗羅を止める。
たったそれだけの行為の筈なのに、俺はやけに緊張していた。
顔が強張る。
けれど、「綺麗だねー！」と花火に見惚れる麗羅のきらきらした顔を見たら、自然と顔が綻んだ。
次々と花火が打ち上げられる度、その光で麗羅の無邪気な顔が照らされる。
絹みたいな栗色の髪、輝く深緑の瞳、程よく焼けた肌、潤った薄ピンクの唇。
今まで見て来た筈のそれが、どうしようも無く可愛く愛おしく、自分の物にしたい衝動に駆られる。
他の奴になんか、雲雀になんか渡したく無い。
「わぁあ！」目を見開いて感嘆の声を上げる麗羅に、思わず笑みが零れた。
すべてに絶望していた俺を助けてくれた位強くて、過労とストレスで倒れるまで我慢しちゃう頑張り屋なのに、地震に震えて頼ってくれる程脆く、だけど何時だって可愛くてどうしようも無い。
特訓の時はホームランした事を麗羅に褒めて欲しくて、「恰好良かった」と言ってもらえた時は嬉しくて仕方が無かった。
号令で麗羅が倒れた時は頭が真っ白になって、気が付いたら保健室まで運んでいた。
兎と戯れ合う麗羅を見たらそれだけで温かくなって、兎との別れを惜しんでいるのを見たら俺も悲しくなっていた。
｢麗羅見てると、なんか幸せな気分になる。
なんでだろうな｣
なんでかなんて、俺はとっくの昔から無意識だけど知っていたんだ。
だって、俺はずっと麗羅の事で一喜一憂している。
胸が痛くて辛い。
心臓の鼓動が高鳴って、このまま爆発してしまいそうだ。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年8月29日 9時
