標的53 恋色ハナビ−２ ページ15
麗羅視点
雲雀先輩の後ろ姿が見えなくなるまで存分に見守ってから、あの風紀委員長に頭を撫でられたのだと自覚する。
刹那、照れて顔が熱っぽくなった。
借り――それも大した事のない借り――があるだけで雲雀先輩が人の頭を撫でるなんて、本当、この一瞬の内に何があったと云うのだ。
「麗羅」今度は、優しく頭を撫でて来る山本君に覗き込まれた。
黒曜石の如く黒い瞳に見つめられる。
｢何ぼーっとしてんだ？｣
｢あー、うん。
……そうだ。ツナ君、大丈夫？｣
居た堪れなくなり、山本君から身体を背けてツナ君と獄寺君の方を向いた。
「ありがとう」微笑んだツナ君は、何かを思い出したと言わんばかりに「あ！」と云う大声を上げた。
「どうしました？」不思議そうに獄寺君が尋ねる。
｢店、京子ちゃん達に番させたままだ！
早く戻らなきゃ！｣
｢そうっすね。笹川は兎も角、アホ女には任せられませんし｣
｢そう云う事だから、俺と獄寺君は戻るね！
二人は休んでて良いから！｣
ツナ君は「なんで野球馬鹿まで、」と言い掛けた獄寺君の腕を引っ張って、石階を駆け下りてしまった。
ツナ君はああ言ってくれたが、京子さんとハルさんと合流しない訳にも行かない。
あたしも屋台に戻ろうとしたが腕を強く掴まれて、それは叶わなかった。
振り向けば、真面目な顔をしている山本君と目が合った。
山本君らしく無い表情に、あたしは小首を傾げる。
｢山本君、どうしたの？｣
｢もうちょっと此処にいようぜ。
良いもんが見られるぞ｣
「良いもん？」訊き返した丁度その時、ドォオン、と云う長くて低い爆音が上から聞こえて来た。
其方の方角を見ると、夜空に青い華が咲いていた。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年8月29日 9時
