標的51 チョコバナナ−２ ページ12
麗羅視点
｢うちは頼まれてから、フランス産のチョコを塗るからなー｣
｢ベルギー産つってんだろ！｣
鳥居を潜ってすぐに、のほほんとした山本君の声と獄寺君の怒鳴り声が聞こえた。
『チョコバナナ』と書かれた看板を掲げた屋台を覗いてみると、やっぱり其処にはツナ君達がいた。
「麗羅さん！」此方に最初に気が付いた獄寺君が、カウンターから身を乗り出して大きく手を振る。
あたしは手を振り返した。
裏方として働いていたらしいツナ君が、京子さんの姿を見付けて表に出る。
ハルさんが会話に入って、嬉しそうなツナ君を見て獄寺君も輪の中に加わる。
少年と母親にチョコバナナを渡して手の空いた山本君に、「やってるねー」と声を掛けた。
｢よっ、麗羅。一本食うか？
特別に半額でやるぜ｣
｢そんな、ちゃんとお金払うよ。
気持ちだけ受け取っておくね｣
「あいよ」山本君はそう言うとチョコレートの壺にバナナを入れ、それにカラフルなチョコチップを塗した。
作業の途中、山本君は手を動かしながら ちらりとあたしを見る。
｢麗羅は浴衣、着ないのか？｣
｢うん。動きにくいからねー｣
｢そっか。麗羅の浴衣姿、すっげー似合うと思うけどな｣
｢あたしが着ると、七五三になるんじゃないかな｣
｢ま、麗羅は浴衣なんか着なくても、充分可愛いけどさ？｣
爽やかな笑顔で何の躊躇いも無く言って退ける山本君のせいで、かぁあっと顔が熱くなった。
自分でも分かる、絶対に今、あたしの顔は赤くなっている！
そんな あたしを知ってか知らずか、山本君がたった今出来上がったチョコバナナを手渡してくれた。
それと引き換えに百円玉を四枚手渡すと、「まいどあり！」山本君が様になる笑顔を向けた。
京子さん達の話がひと段落ついたみたいで、あたし達は他の屋台も見て来る事にした。
話の中で花火の話が出たようで、「早く終わらせるぞ！」とツナ君が、「十代目のお望みならば！」と獄寺君が、それぞれ燃え上がっていた。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年8月29日 9時
