標的34 眠れる霧のナッポー−４ ページ31
｢クフ、クハハハ！ 君は本当に興味深い人だ。
自分で創った幻覚が、無理矢理解かれる感触は初めてですよ。
どうやって解いたのですか？｣
｢解いたも何も、あたしは幻覚が効かない体質なんです｣
｢成程。僕にとっては最悪の体質ですね｣
「最悪」と言っている割には、彼は心底愉快気に笑い声を上げている。
正直言って、少し、いや割と不気味だ。
あたしの気持ちも知らず、彼は一頻り笑い終えて、目に溜まった涙を拭きながら、「気が変わりました」と言い出した。
｢こんな所で力を消耗するのも、馬鹿らしい話ですね。
それに、もっと君の能力を見たくなりました。
こんな殺風景な世界では無く、現実でね｣
｢あたしは現実でまで、会いたく無いんですけどー｣
そう言いつつ、必ず会わなければいけない事は分かっている。
分かってはいるものの、反射的に返してしまった。
これが『毒舌』なのかもしれない。
彼は隠しから包帯を取り出して、半ば強引にあたしの手に持たせた。
付着している血液が、乾いて赤黒くなっている。
｢向こうの世界で合う時の目印です。持っていて下さい｣
｢だから、会いたく無いって言ってるでしょー！
それに、血の付いた包帯なんて物騒なんですけど｣
｢僕の血ですから、大丈夫ですよ｣
｢大丈夫の意味が分かりません｣
下らない会話をしている内に、何時の間にか、彼の姿が薄くなり始めている事に気が付いた。
持たせ逃げするつもりだと察し、彼に包帯を押し付けた。
けれど、かなり薄くなってしまった為に、擦り抜けてしまった。
してやったり、とでも言うように「クフフのフ」と笑う彼を、あたしは遠慮無しに睨み付ける事しか出来なかった。
間も無くして、完全に彼は消えてしまった。
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レイチェル - S隊長さん» そう言って頂けると、嬉しいです。これからも頑張ります。ありがとうございます！ (2018年5月6日 11時) (
レス) id: e5404397aa (このIDを非表示/違反報告)
S隊長 - すごく面白くて更新を毎日楽しみにしています！！ (2018年5月5日 21時) (レス) id: c58740c157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年4月30日 17時
