金華の香に当てられて【kym短編集】 (ページ39)

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京『俺じゃ、俺じゃだめだったの、おれのせいで、ごめんなさい、ごめんなさい！』

今日は「きょもほく特集」と称した雑誌の企画で京本との2人仕事

最近寝不足なようで目の下にクマを作っていた京本は休憩時間に楽屋のソファで眠ってしまった。

そしていきなり飛び起きたと思ったらあの言葉だ

「京本どうした！？とりあえず落ち着いて、…うん、そうだよ、ゆっくり話して」

京『…夢に、目黒が出てきて、それで、目の前で、あの場所で、飛び降り、おれのせいなの、おれがあんなこと言わなければ、別れようなんて言わなければ！』

「京本！！…大丈夫だよ、ほら、深呼吸。…うん、上手。ゆっくりでいいから、ね？」

目黒は1か月前にビルの屋上から落ちて死んだ。

その現場に居合わせたのが京本だったというのは聞いていたが、言い方からして2人は付き合っていて、京本が別れ話をして目黒が自殺した？

京『それで、言われるの、いつも同じこと、目黒が死ぬのは俺のせいだって！それで、笑って落ちてって、ずっと、毎日毎日おんなじ夢』

それで眠れなくて最近クマが酷かったのか

京『でも、！……本当は嬉しくて、だって俺、目黒のこと愛してた、別れようなんて嘘だった！目黒が、俺以外と仲良くするからそれが嫌で、だからちょっとくらい意地悪してもいいよねって、思って、』

「…それで、別れようって言ったんだ。じゃあまだ目黒のこと好き？」

京『好きなんかじゃ足りない、愛してる！だからね、目黒が毎日夢に出てきて、俺のこと責めるの、苦しいけど嬉しい…だって大好きな目黒に逢えるんだもん！…俺ね、目黒のこと助けたくて、手を伸ばすの、落ちるって分かってるから、走って、手伸ばして、それなのに届かなくて、いつも目黒は笑ったまま、落ちる… 俺じゃだめなの！誰か目黒を、助けてよ……』

ぼろぼろと涙を流す京本。

…どうにかしてやりたい気持ちはあるけどこればっかりはどうしようも無いから、

「京本。…残念だけど誰も目黒のことは助けられないよ。目黒はもうこの世に居ない」

京『やだ、ちがう…なんでそんな酷いこというの…？目黒は生きてる、誰かが手を掴んでくれれば、』

ごめん、京本。

今から俺は狡いことを言う。

「目黒は無理だけど、でも…京本を助けることはできるよ。

…ねぇ、京本。俺じゃだめ？俺ずっと京本のことが、」

END