金華の香に当てられて【kym短編集】 (ページ11)

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俺は人間が嫌いだ。

厳密に言うと人間の内側の汚い部分。

誰かを恨めしく思った時に湧いてでる、ドロっとした黒い感情。

俺は人間のそんな部分を見たくない。

取り繕われた外側だけを見ていたい。

だって、曝け出された内側は汚いから。

それは自分自身にも言えることで。

だから俺は他人に自分の心の中を見せることは無い。

俺が普段本心のように発する言葉はそれに見せかけた綺麗事だ。

俺は綺麗なものが好き。

なのにこの世界は汚い感情のオンパレード。

どんなに自衛したってそれはふとした瞬間に俺を苦しめる。

そんな時に決まって俺を救ってくれるのは世界一綺麗な愛しい彼で。

息を飲むほどの美しい顔、風に靡くサラサラの金髪、くすみを知らない真っ白な肌、スラリと伸びた手足と、完璧なビジュアルに加え性格まで美しい。

綺麗の擬人化と言われてもしっくりきてしまうような彼がその美しい声で「北斗のことが好き」と伝えてくれた時は歓喜で涙した。

さて、久々のオフである今日、水曜の昼下がり。

恋人である彼とソファに隣同士で座って、偶々つけたテレビでは国会をやっていた。

いい大人が揃いも揃って醜い争い。

人間の内側と内側のぶつかり合いだ。

苦しい、苦しい。

例えそれが自分に無関係だと分かっていても見るに堪えない。

何度も言うが俺は汚いものが嫌いなんだ。

気持ちの悪い恐怖心が芽生え、思わず膝を抱えて丸くなる。

全く意味の無い行動だけどこれはきっと俺の防衛本能。

京「ほくと、どうしたの」

横から声をかけられた。

鈴を鳴らしたような可愛らしい声。

人間の汚い部分に触れて辛くなった時助けてくれる、俺の愛しい人。