・黄side ページ42
いつも通り、看護師に伝えふっかの病室に向かう。芸能人って事もあり、個室だからいいんだけど、本当なら面会時間は過ぎてるし、なんならふっかは寝てる。
前に進むと決めた癖に、俺だけは止まってる感じがした。リーダーなのにな、お前らを引っ張らなくっちゃいけないのに、気付いたら皆に引っ張られていた。
部屋に入れば、案の定ふっかはぐっすり寝ていた。あの日再開した時と比べたら傷はほぼ治ったし、軽くなっていた体重もやっと標準に戻りつつある。
ただ、やっぱり心の傷って言うのはそう簡単に治るわけじゃなかった。心の奥底に染み付いた恐怖は今でも染み付いていて、たまにパニックになる時があった。
寝てるから、そっと近付いて俺は久々にふっかの頭を撫でた。そう、安心しきっていたのだ。寝てると思って。
「…康二の言う通りだな」
「え…」
寝てると思っていたのだが、実は寝たフリをしていた。この時間帯に来るのは分からなかったはずなのに。だけど、康二の言う通りって事は、康二が伝えたんだ。
「…やっと会えた、照に」
ふにゃって笑う彼に俺は泣きそうになってしまった。待たせちゃってごめんね、と俺は謝った。
118人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:レイ | 作成日時:2023年3月23日 11時