目指せ！個性の無い世界！３【ヒロアカ】 (ページ6)

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百五歩目。ページ6

―Aside―

《えー、ただいまをもちまして、配置されたすべてのフックが危険区域より救助されました。誠に勝手ではございますが、これにて仮免試験全工程終了となります》

『終わった...』

「うわぁぁあああん！！」

『！？』

試験は終わった。この場には受験者とHUCの人しかいないはず。

じゃあ、遠くで泣いてるのはだれだ。

考えながら走る。もしかしたら本当に崩壊に巻き込まれたりしたのかもしれない。何かしらの事故が起きたのかもしれない。

近くにいた先輩には聞こえてないみたいで付いて来たりはしなかった。

泣き声が大きくなって目に入ったのは座り込んだ男の子だった。

『きみ！どうしたの、大丈夫？』

ヒュッ！

『！！』

「さけられちゃった。ねぇ、お話ししようよ、Aちゃん」

『...トガヒミコ』

「そーです！トガです！Aちゃんなら気付いてくれると思いました！うれしいなぁ、うれしいなぁ！」

隠すつもりもなかったくせに。

至近距離で放たれたナイフを何とか避けて、距離を取る。

首筋に血が垂れる。本気で殺すつもりだったな。反応が遅れた、油断した。

ナイフの種類も、投げ方も、私を呼ぶイントネーションも、全部神野区で見て聞いた。当然覚えてる。

小さな男の子の姿から泥が溶けるみたいに崩れて、士傑の女の人の姿になった。

トガの"個性"【変身】か。Ａ組の誰かに変身しなかったのはできなかったのか、しなかったのか。

どんな"個性"にも制約みたいなものがある。【変身】するのにも何かしらの条件が必要なはず。

二重に違う人の姿にもなれる。身長、体型、性別、声、全部その人のものだ。

ヴィラン連合は神野区以来潜伏してる。組織的な目的での行動か、トガの単独か。

バサッ

「え？なんですか？？」

『上着。半袖だけど着ないよりマシでしょ』

「...やさしいねぇ。Aちゃんは、ホントに優しいのです。私、出久くんとAちゃんに会いに来たんです」

『じゃあ、きみの勝手な行動な訳だ』

「名前で呼んでよAちゃん。お友達はちゃん付けするんだよね？」

『お友達になった覚えはないかな』

「...ザンネンです。戦う気はありません。またね、Aちゃん」

そう言って逃げたトガの後を追った。捕まえるつもりだった。

でも、一瞬目を離しただけで気配を探れなくなった。

"個性"じゃない。トガが身に付けた技術だ。

その経緯も、泣きそうな顔をした理由も、私に聞く資格はない。

『"またね"、か...』

▽