百四十七歩目。 ページ48
―Aside―
『はぁっ、はぁっ、！』
セントラル病院の廊下を走る。息が切れて苦しい。
病院で走っちゃいけないことは知ってる。でも、吞気に歩いてなんかいられない。
見知った名前が書かれたネームプレートがあっても足は緩めなかった。
目的は一つだけ。ただあの人のいる所に向かうこと。
色んなことが頭に浮かんではぐるぐる渦巻いてる。言葉にならなくて気持ち悪い。
それでも、授業中に飛び込んできた先生に言われた言葉だけがはっきりと頭の中で繰り返されてる。
混乱しているし、受け入れられない。それでも理解は出来てしまうから。
ようやく目的の部屋が見えてきてスピードをあげた。
集中治療室の自動ドアを開いて部屋に入れば、そこには薫子さんと百足さん、リカバリーガールに相澤先生。
それから奥の部屋にはオールマイトと緑くん、通形くんが居た。
制服姿の私が不自然で、場違いだと思った。
「Aちゃん、」
薫子さんに声をかけられたけど、返事が出来なかった。
目だけ合わせて、それから奥の部屋に入った。
医療機器がベッドを囲んでいる。
そこには、私の恩人で、保護者で、師匠である人、
左腕を失い、腹部には無数の管を取り付けられた未来さんが寝かされていた。
その光景に顔が歪む。
通形くんの向かいに行って手すりに手を置いて、未来さんに声をかけた。
『未来さん、』
「...あぁ、Aか...会いにきて...くれたんだな...」
未来さんの意識があることに安堵して、それでも周りの機械音が不快だった。
昔から病院が嫌いだった理由があの日ようやく分かった。お父さんが入院してたからだ。
心電計の音を聞くとまだ帰ってこれないんだって思ってたから。
あぁもう、いやだな。未来さんまで連れてかないでよ。
分かってる、分かってるよ。
ちゃんとした治療を受けてもダメなくらい酷い怪我なんだよね。
薫子さんと通形くんが泣いてるのも、オールマイトがここにいるのも。
全部、未来さんを想ってなんだよね。
『未来さん、お願いだから、会えないとこまで行かないで』
「さみしがりやな...ところは...相変わらず、か...。Aは、もう...一人じゃ、ないだろう...？」
『未来さんがいるから、一人じゃないの。あの時私を未来さんが拾ってくれたから、今も未来さんが私を守ってくれてるから、雄英にいれてる。全部、未来さんのおかげなんだよ』
未来さんまで居なくなったら、私はどうすればいい...？
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月6日 22時
