百四十五歩目。 ページ46
―心操side―
やられた。まさかAからキスされるなんて思ってなかった。
Aは恋愛事に疎いからあっちからはないと思ってたのに。
俺がリードしないととか考えてたのが恥ずかしい。
付き合った時もそうだったけど、今もA平然としてるし。
毎回俺だけ照れてんのカッコ悪い。
俺だって男としてのプライドくらいある。
初キスは俺からしたかったし、Aの照れてるとこ見たかった。
「A、俺からもしていい？」
『おやすみのちゅー？』
「ふつうのちゅー」
『挨拶以外のちゅーがあるの？』
「...ははっ、勉強不足だな」
俺よりずっと頭の良いAが知らないことがあるとお手本かってくらい不思議そうにするこの表情が好き。
目を大きく瞬きさせて首をかしげるのホントあざとい。
頬に手をあてればすり寄ってくるのもずるい。
顔を近付けても避けたりしないけど、目も閉じない。こういう時は閉じるんだって教えればその通りにするんだろうな。
Aは俺のこと信用してくれてるから。素直でかわいい、俺の彼女。
『ん、......んっ？ん、んんーっ！』
「...」
一度軽く唇に触れて、もう一回押し付ける。
今度は長く、離さない様に腰と後頭部に手を回して引き寄せれば少しだけ目を見開く。
最初はAもじっと目を合わせてたけど息が続かなくなってきて肩に置いてた手に力が入った。
だんだん苦しそうな表情になって目をぎゅっと閉じた所で離した。
『ぷはっ、』
「ふっ、下手くそ。息しなよ」
『失礼な、できなかったんだよ！これがふつうのちゅーなの？世のカップルはみんな肺活量すごいの？？』
「そんな訳ないだろ。鼻で息するんだよ」
『ちゅーしてる時息できないよ？心操くんは何で息できてるの？したことあった？』
「ないよ。Aからされたのがファーストキス」
『えっ、私心操くんの初めてもらっちゃったの！？』
「声大きい。あと言い方な」
それで言ったら、俺もAの初めて貰ってるんだけどな。
何に驚いてるんだか。むしろ俺が誰かとキスしたことあると思ってたのかよ。
なぜか慌ててるAが可愛くて触れるだけのキスをすればピタッて動きが止まった。
一拍おいてみるみるうちに赤くなってくAの顔。
何だそれ。どこに照れたんだ。
『ずるい、』
「なにが？」
『もう寝る！お布団入って！』
「え、ちょっ」
Aが布団に移動しながら俺を引っ張る。
照れ隠しか、これ。
照れててもちゃんと一緒に寝ようとするの可愛いな。
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月6日 22時
