百二歩目。 ページ3
―Aside―
私に助けを求めたのは10歳くらいの女の子。走って来たのと外傷は見えないから怪我はなさそうだ。
走って来た方向にこの子のお母さんが居るはず。
まずは女の子の状態を確認。
『うん、助けるよ！きみはどこか痛いところはない？』
「わたしはないの。でもママがいたそうな顔してて、だいじょうぶって笑ってるけど、ウソなの」
『そっか。ありがとう、一人でよくがんばったね。ママがどこにいるか教えてくれるかな』
「助けてくれる...？」
『もちろん！きみもママも助けるよ。だから、もう大丈夫！』
要救助者は怖くて、不安でたまらない。
だから、助けてほしい。安心させてほしい。もう大丈夫だと笑って欲しい。
この場で私が取る行動は、あの日私がヒーローたちにして欲しかったこと。
女の子を抱えて揺らさないように気を付けて走る。手で示してくれる方向に走りながら、他に被害者が居ないかと街の様子を確認する。
私の他にも20人近くの救助者がいる。さすが先輩方。慣れてる。
救護所の場所と他の人がどの方面の救助に向かってるのかを確認して、先を急いだ。
「あそこ！！ママ！助けよんで来たよ！！」
『っ、』
女の子が指した先には、瓦礫の下敷きになった女性が居た。
両足が挟まって動けないようだった。額から流血してるのも見えた。
女性は女の子の声に反応せずにうつ伏せのまま。
周辺に人の気配はなく、被害にあったのはこの女性と女の子だけらしい。
駆け寄って女の子を降ろす。
『触れますね』
一言声をかけてから女性と女の子の手をとって"個性"を使う。
【実物遮断】
女性の身体に触れていた瓦礫が僅かに動いた。
圧縮訓練で身に付けた、"強制遮断"。
できるようになったのは良いが、遮断する対象と触れている対象のどちらも視認していることが条件だと分かっている。
しかも、"個性"を【遮断】する場合はその"個性"がどんなものなのか知ってる必要がある。
とりあえず、これで女性の身体に負担はなくなった。
『私の声が聞こえますか？指先だけでもいいので動かせますか？』
女の子から手を離し、女性の首元に手をあてて脈を測る。本当に怪我をしている訳ではないから平常通りだが、これが実際にあったなら脈拍に変化があるだろう。
女性がうっすらと目を開けて、指を動かした。意識はある。
「ママ！」
「あ、さひ...」
『娘さんも無事ですよ。今から貴女も助けます。もう大丈夫ですからね』
▽
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 93人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月6日 22時
