百十五歩目。 ページ16
―Aside―
「ＰＯＷＥＲ！！」
『あはは、全滅だ〜』
「ミリオは加減を覚えた方がいい...」
「Aちゃんも戦うかい！？」
『ううん。通形くんの戦ってるところ見れたから満足』
「そっか！！」
未来さんの事務所で通形くんと戦闘訓練したことあるけど、自分の身体をすり抜けられるって不思議な感覚だよね。
通形くんには負けないけど、勝てない。
"個性"の相性が互いに悪すぎるから。
【透過】はすり抜けるから害はない。通形くんの攻撃は物理的な殴る蹴るだから【実体遮断】でダメージは負わない。
こっちからの攻撃も【透過】されて効かない。【個性遮断】なら攻撃できるけど、その間は私にも攻撃が効くから切り替えられない。素の力じゃ通形くんには負ける。
リスクありなら勝敗もつくけど、実際問題そんなことしないからね。
「まぁ、こんな感じなんだよね」
「訳分からず全員腹パンされただけなんですが...」
「強すぎる」「ずるい」「ワープ」戦闘中にもみんなが口にしてた。
【透過】が強いのは通形くんがすごく努力したから。
彼が1年生の時から訓練の様子をちょくちょく見てたから、どれだけきついのかも、【透過】の使い方が難しいのかも知ってる。
"個性"は強化できる。でも、強くするまでの過程は人それぞれ違う。
目に見えるものと目に見えないもの。物理的なものと感覚的なもの。その違いは大きい。
通形くんの苦労を同じだけ知ることはできないけど、私も未来さんも天喰くんも通形くんを尊敬してる。
「予測！周囲よりも早く、時に欺く！何より予測が必要だった！そして、その予測を可能にするのは経験。経験則から予想を立てる。長くなったけれどこれが手合わせの理由。言葉よりも経験で伝えたかった」
「インターンにおいて我々はお客でなく一人のサイドキック、プロとして扱われるんだよね。それはとても恐ろしいよ。プロの現場では時に人の死にも立ち会う。けれども、怖い思いも辛い思いも、全てが学校じゃ手に入らない一線級の経験！俺はインターンで得た経験を力に変えてトップをつかんだ！ので、怖くてもやるべきだと思うよ、一年生！！」
通形くんは明るくて元気。未来さんが好きなタイプの人間。
笑顔でやってきて笑顔で帰っていく。どれだけ訓練がきつくてもそれは変わらなかった。
未来さんがインターン生を連れて来た時はホントに驚いたけど、通形くんに出会えて良かったな。
「Aちゃんまたね！！」
『うん、またね！』
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月6日 22時
