百一歩目。 ページ2
―Aside―
《次の試験でラストになります。皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます》
先着100人が決まり、一次試験が終了した。見事Ａ組全員が通過した。
モニターに映されたのは一次試験のフィールドで爆発が起こり崩壊。どうやったのか要救助者として一般人の振る舞いをするHUCのみなさんが現れた。
二次試験は受験者の救出活動をポイントで採点し、基準値を超えていれば合格。
想定されているのは神野区の事件。あの日、大勢の人が亡くなった。負傷者も多数出た。
私は４人に助けられて、逃げた。それが最善だったと思う。でも、あの場にはもっとたくさんの人が助けを求めてた。
"個性"を使うのは規則違反。それでも助けられる命があるのなら残るべきだったのではないかと後悔がある。どんな正当な理由があったとしても、してはいけないことだと理解している。
だからこそ、次同じ場に居合わせた時には助ける。これも仮免を取りたい理由の一つ。
「Aちゃん」
『ん、なぁに梅雨ちゃ、！ 警報...』
「あとでお話しましょう」
『おっけー』
《ヴィランにより大規模テロが発生。規模は○○市全域。建物倒壊により傷病者多数》
「演習のシナリオね」
『うん、二次試験開始だ』
またもや待合室が展開していき、被災現場に置かれた。
ホント、雄英といい公安といい、お金かけたものぶっ壊すの大好きかよ。
《道路の損壊が激しく、救急先着隊の到着に著しい遅れ。到着するまでの救助活動は其の場に居るヒーローたちが指揮を執り行う。一人でも多くの命を救い出すこと。それでは...》
《スタート！！》
合図と同時に走り出す。
一次試験で私がいたエリア。あそこは高層ビルが多かった。完全に崩れてないところもあるはず。
崩壊の下敷きになった人、道が塞がれて閉じ込められてる人、怪我をして動けない人。
被害者だって多種多様。
意識がなかったり声が出せなかったりする場合もある。索敵能力のある"個性"の人はそんな被害者を見つけられる。
"個性"によってどんな形で活躍できるのかは変わる。でも、どんな形でも貢献できる。助けるのがヒーローだ。
「お姉ちゃん！！助けて！！」
『！』
「ママが、ママが動けないの！わたし、引っぱったんだけど、ダメで、...だから助けて！」
あちらこちらから聞こえる悲鳴、泣き声、助けを求める声。
それらが、あの日聞き入れられなかった私の声と重なった。
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月6日 22時
