【HQ】恋は盲目【影山飛雄】

46.高めのトス ページ46

「あっ！？」
「！！…吸い込みか」
「あぶね〜、でもこれでマッチポイントだ！」

日向の速攻が伊達工業の7番に捕まってしまったが、相手の体とネットの間に球が落ちたことでカウントは21対24とマッチポイントのところまできた。

『でもここで日向くんは後衛』
「逆に伊達工は一番ブロックが強いターンだ…っ」

そこから日向のサーブミスがあり、カウントは22対24。
依然烏野のリードだが、じわじわと迫ってくる伊達工業。

そして東峰の打ったアタックは伊達工業のブロックに阻まれ、飛ばされた球は守備が甘くなっている後方へと飛んでいく。

「まずい、後ろがガラ空きだっ…」
『西谷先輩…っ！』
「上がった！？」

なんとか後ろに走り込んで腕を滑り込ませたのは西谷で、これぞ烏野の守護神であると見ている者たちに知らしめるかのような、素晴らしいリベロとしての働きだった。

「でもほぼ真後ろからのトス…、打つの相当ムズいぞ…！」
「トスちっとネットに近いか…！」
「押し合い！」
『旭さん…っ、負けないで』

しかし思いも虚しく、伊達工業の7番とのネット側の攻防は向こうに軍配が上がった。

「くそ！？」
『カバー間に合わない…っ』
「っ足…！？」

ネット側の競り合いで押し負けた結果、こちら側のコートに球が落ちる。
誰もがカバーは間に合わない、そう思ったが西谷が足を伸ばしギリギリのところで球が上がった。
そこに素早く影山がカバーに入り、次の攻撃へと移ろうとしている。

「次、誰にあげる！？」
「立て続けに一人が打つのはきついし…」
『…もう一回っ！』
「「！？」」
「Aちゃん！？」
『影山くん！！決まるまでっ！！』
「！」
「そうだ！影山もう1回！！！！」
「決まるまでだ！！」

思わず叫んでしまった言葉に、一瞬影山と視線が交わった気がした。
Aの言葉に続くように、菅原と東峰も揃ってトスを呼ぶ。

そして影山から上がったのは、ネットから少し離れた高めのトス。
いつもの影山の精度の高く速い鋭いトスとは違う、これは菅原が言っていた東峰の得意なトスだ。

「…っ」

高く飛んで振り抜いた右腕は、相手のブロックを打ち抜きネット際ギリギリで転がり落ちるように相手コートに落ちた。

ーﾋﾟｯ…ﾋﾟﾋﾟｰｯ

「「おおおっしゃぁああ！！！」」
『…やっぱりエースですね、旭さん』

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