【HQ】恋は盲目【影山飛雄】

2.一目惚れ ページ2

高い身長、すらっとした長い手足。サラサラの黒髪に、切長の鋭い瞳。
彼以外に視線を移すことを許さないかのような、圧倒的な存在感。
彼の手から繰り出されるボールは、美しい動線を描き、選手の手元に届く。まるで、針の穴を通すかのような繊細なコントロールに目が釘付けになった。

自分は意外と単純な女だったのだなと思った。これは一目惚れというやつだ。
恋をしてしまえば、アタック練習をミスした仲間に放っている怒声ですらも素敵に聞こえる。

『…いや、アリだなバレーボール』
「アリでしょ！？アリだよね！！」
『あの2番超タイプだわ、北川第一の』
「ねぇ！？敵チームなんだけど！？ちょっと！！」
『彼有名なの？素人目に見ても動きが段違いじゃない？』
「影山飛雄でしょ？すっごい有名らしいよ、彼ピが言ってたんだけど、あー、なんだっけ、んー…あっ！コート上の王様！」
『コート上の王様、確かにコートに君臨していらっしゃる…』
「オーラ半端ないよね、味方も萎縮しちゃってんじゃん」

確かにチームメイトは彼に対して萎縮をしてしまっているが、彼の発言は何一つ間違ったことは言っていない。彼は、一つの妥協も許さずにバレーボールという競技に真剣に向き合っているのだろう。

それに比べてチームメイトは、ごく普通に部活動としてバレーを行なっているのだろう。
同じ競技をプレーしているが、その競技への向き合い方が違うが故に彼らがうまくいっていないことは、北川第一というチームを初めてみた私からしても見え見えだ。

『うーん、彼が味方を萎縮させてるってよりは、方向性の違いって感じじゃない？』
「何そのバンドの解散理由みたいなの」
『バンドの解散理由みたいなものだよ。同じ音楽ってカテゴリでも、ロックとかメタルとかジャンルが違うみたいに、彼らはバレーボールをしてるけど、目指す先が部活かプロかみたいなことでしょ』
「Aがなんか難しいこと言ってるー」

私が彼を見たのは友達の彼氏の学校との一試合だけだったが、強烈な印象を残した。
それは、かっこいい見た目や段違いの能力という部分だけではない。

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