18-赤蜘蛛 ページ18
昨日の内に部下に指示を与えた。そして今日は久し振りの休日だ。それも一日！軍人で司令官と言えど、休まなければ身体に支障を来す。
「なぜ休日に呼び出されるのだ……」
通常通りに目覚め、朝食を済ませ食器を受け取りに来た使用人に渡された通知の紙切れ。休日と言えど、上司命令ならば出動せねばなるまい。それも相手は総統閣下だ。呼び出しは昼過ぎだったので、午前中に城下町に降りて……あぁもう。とにかく外出許可は昨日のうちに貰ったので、店が開く時間になったら出よう。話は戻って来てからだ。
呼び出された時間が近付き、舌打ちしたいのを奥歯を噛み締めて抑え、大股で呼び出された場所へ向うのは、幹部棟の一室だった。
「休日のところ、呼び出してすまない。警邏部隊司令官殿」
「いえ。それで、急用というのは……」
正直、今すぐにでも部屋に戻りたいが、それはおくびも出さない。表情も極力動かさないでおく。余計な労力は使いたくない。
「Aちゃん、紅茶は飲めるめう？」
「紅茶ですか？飲めますが……」
「甘い物は好きか？」
「あまいもの……？」
机に並べられた、宝石のようなケェキやスイーツというものが。丸いもの、平べったいもの、色の淡いもの、焼き目のあるものと様々に並んでいる。
「……食べたことは、ありません」
姉様達が食べていた気がする。自分には無縁だった代物が、目の前に並んでいる。あれは女子供の食べ物だから、男である自分には無縁だと、一生口にすることはないと父上に言われた物だ。極力視界に入れないようにしつつ、口を開く。
「それで、用件は一体何でしょうか」
「何、部下を労うのも上司の務めだ」
そんなもの、要らない。あの頃あれだけ切望したものを、ぽんと目の前に差し出され、混乱と拒絶が迫り上がってくる。
「……自分はこれで失礼します。休日ですので」
呼び止める声に上司命令として振り返るが、長居するつもりは無い。
「それ以上薦めてくるのなら、書記長をお誘いになられては如何ですか。インカムもありますし、書記長室方面に用事があるのでお呼びして来ましょうか？」
おっと目を逸らされたぞ。と言うわけで自分は退散した。これ以上休日を浪費してなるものか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ＠pc垢 - ミツユキさん» 誕生日プレゼントとしてもう一話更新しました！大きく動いた回(?)となっております！ (2020年7月6日 22時) (
レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
ミツユキ - 更新ありがとうございます。私の、最高の誕生日プレゼントになりました！ (2020年7月6日 18時) (レス) id: c04652f79c (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ＠pc垢 - わぎゃあコメントありがとうございます!!コメント嬉しすぎて語彙力追い付かないです。現時点が今作一番の山場ですが、しっかりとハッピーエンドに向いますので！それまでもう暫くお付き合いくださいませ！ (2020年7月5日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
碧 - コメント失礼致します。とても丁寧に作り込まれたお話で、私の語彙力ではこのお話の素晴らしさを言い表すことが出来ません…！軍パロ作品の中でも特に繊細に作られたお話だと感じました。これからも素敵なお話を楽しみにしています！長文失礼致しました。 (2020年7月4日 17時) (レス) id: 7cbe04ba0e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
