14-赤蜘蛛 ページ14
休憩時間に、隊員から呼び出され駆けつけると、取っ組み合いが起きていた。要塞敷地内で揉め事とは何事だ!?
「給料貰ってやってんのは散歩だけだろ?ふらふら〜って行って返ってくるだけの」
「お散歩しすぎじゃねぇか?バカ蜘蛛部隊よぉ」
「散歩じゃない、警邏活動だ。れっきとした仕事だ!」
「貴様、狙撃部隊の隊員だな。名を名乗れ」
取っ組み合いに割って入ると自分が出てくるとは考えてなかったのか、明らかに表情を変える狙撃部隊の隊員。自分の隊員に下がるよう伝え、改めて対峙する。
「警邏部隊は確かに戦争国家的には無益かもしれん。だが、最も国民と接するのは我々、警邏部隊だ。国を知り、国民を知り、軍と国民の信頼を繋ぐ重要な役割を持った部隊だ。ただふらふらと散歩しているとは聞き捨てならんな」
「ケッ。総統のお情けに甘えてるバカ蜘蛛がしゃしゃってんじゃねぇよ」
「ほぉ?総統閣下のお情け、か」
こいつは舐められたものだな。相手にするのも馬鹿らしいが、このまま引くのも気が収まらない。なにより泥を塗られたのだ。どの部隊に関わらず、他の部隊を愚弄するような発言行動は原則で認められていない。そのような人材を求めてはいないのだ。まだ軍に所属しただけの若造によくあると言えば、否定はできない。軍への忠誠は総統閣下ならびに国への忠誠であることを。
「何してるん?」
「鬱司令官!」
「狙撃部隊司令官、失礼しました。そちらの隊員に我が部隊を愚弄されまして」
「んーと?何て言ったん?」
向いたのはこちら。後ろに引かせていた隊員が自分より先に口を開いた。
「“給料貰ってやってることは散歩だけだろ?ふらふら〜って行って返ってくるだけの”“総統のお情けに甘えてるバカ蜘蛛がしゃしゃってんじゃねぇよ”と!」
「総統のお情けねぇ」
一言一句違わぬ事実に、狙撃部隊司令官の目が、すっと細められた。
「うちの隊員がすまんなぁ」
次いで出たのは、へらりと締まりの無い表情だった。威厳もなく、拍子抜けするほどの。
「んで、あんたらは今日この時をもってクビな。さっさと荷物纏めて夕方までに出てって」
「は、!?」
「当たり前やん。はい、さよーなら」
その表情のまま、彼は隊員にクビを突きつけた。自分も含め困惑したが、冗談では無いらしい。
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紅鴇ベニトキ@pc垢 - ミツユキさん» 誕生日プレゼントとしてもう一話更新しました!大きく動いた回(?)となっております! (2020年7月6日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
ミツユキ - 更新ありがとうございます。私の、最高の誕生日プレゼントになりました! (2020年7月6日 18時) (レス) id: c04652f79c (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ベニトキ@pc垢 - わぎゃあコメントありがとうございます!!コメント嬉しすぎて語彙力追い付かないです。現時点が今作一番の山場ですが、しっかりとハッピーエンドに向いますので!それまでもう暫くお付き合いくださいませ! (2020年7月5日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
碧 - コメント失礼致します。とても丁寧に作り込まれたお話で、私の語彙力ではこのお話の素晴らしさを言い表すことが出来ません…!軍パロ作品の中でも特に繊細に作られたお話だと感じました。これからも素敵なお話を楽しみにしています!長文失礼致しました。 (2020年7月4日 17時) (レス) id: 7cbe04ba0e (このIDを非表示/違反報告)
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