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「僕と結婚してください」
こんな言葉をこんな形で聞くとは思ってもいないことだった。
私はこのまま、何もかも忘れて行く彼の姿を見守って、隣で支えることしかできないのだと思っていた。
医者にも、友人にも、自分の家族にも、彼の家族にも、「彼が思い出すことはないだろうから支えるだけでも十分だ」なんて最初から希望も何もないような言葉だけを投げかけられた。
私はそればかりを聞いていて、彼を信じることなく、ただ忘れていくのを見ることしかできないのだと自分の中で勝手に諦めていた。
でも、確かに心のどこかで「いつか全部思い出すかもしれない」と言う希望は存在していたのだ。
そして、そんな彼の返事なんかとうの昔に決まっている。
「もちろん!私を選んでくれて、ありがとう、…!」
*****
あれから二年が経過したホワイトデーの日の事。
「A〜!?今日来てくれるんでしょ?」
「もちろん!今日のライブがうまく行くといいなあ!」
彼は有名な“歌い手”に。
私はそれをサポートして。
そして、彼は“夫”となり、私は“妻”に。
「今日ホワイトデーか……絶対うまく行く!」
自信に満ちた笑顔で私に笑いかけてくる彼に安心して頷く。
「所でさ、二年前に渡したムーンライトの石言葉、って知ってる?」
家を出る直前でそんなことを聞いてくるものだからよっぽど大切なのだろう。
悪戯をする子供のような笑顔を浮かべる彼に「何なの?」と聞くと、嬉しい答えが。
“純粋な愛”、“二人の出発”
絶望したホワイトデーの日。
それがやがて明るく、輝かしい日に変わって。
まさしく、私達二人が再出発する日に変わったのだ。
確かに奇跡は存在していた。
奇跡のホワイトデーが。
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雨上がりのcrew(プロフ) - ところで、甘味没収のときのセンラさんは夢主ではなく他の人と結婚をしていたのでしょうか、、、?隠し持っていた結婚指輪と書いてあったので、、、 (2019年7月16日 0時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください!! (2019年7月16日 0時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
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