＊＊ ページ11
「……A」
やっと呼ばれた名前に、ふらりと目線を上げてみる。
すると両手で顔を挟まれるようにして頬に手が添えられ、少しだけ上を向かされる。大好きな、先生の手。白くて、細いけれど、骨ばっていてごつごつした、男の人の綺麗な手。
じんわりと溶けだしてくる熱に浮かされながら彼の瞳を真っ直ぐに見上げていると、やがて先生の形の良い唇が僅かに開いた。
「……責任取るから、結婚して」
「……は、ぇ？」
待っていた『好き』というシンプルな二文字とは掛け離れた言葉に、雰囲気ぶち壊しの間抜けな声が出た。
でも先生は私の顔を両手で挟んだまま、真剣な表情で続ける。
「多分親御さんも反対すると思う。元生徒に手だしてる、って時点で俺の信用とか多分無いやろうし、……でも、交際すんやったらもう覚悟は出来てる。全部責任取る。俺が全部なんとかする。だから、……結婚、して。俺と、結婚して下さい。
……好きです、おまえが」
ぼろり、と耐えきれず流した涙は大粒のものだった。
(……ひどいよ、こんなの)
何回私を泣かせるんですか、貴方は。そんな、選択肢が一つしかないことを私に提案しないでよ。そんなの命令と一緒じゃん。ばか、先生の馬鹿。
「う、うぅっ……せんせいの、ばかあ……こんなお返し、きいてないぃ……」
「うん」
「ばか。先生の、あほ……イケメン……」
「うん」
「……好き」
「……」
「する。けっこんする。せんせいとするぅ……！！」
途端に奪われた唇に驚く暇もなく、私の目からはまた音もなく涙が零れていった。先生の方へ落ちていっても気にしないまま、私は先生に抱き着いて、キスをしたまま泣いた。
甘いような、苦いような、しょっぱいような、酸っぱいような……でも、幸せで幸せでたまらない時間。
冷めきったココアも、英語の参考書も、デスクに置かれた先生のメガネも、多分全部甘い味。
先生がお返しにくれたのは、甘くて幸せなこれからの日々。
(あぁ、やっと……)
甘くてたまらないこの人が、手に入った
私は彼の見えないところでうっそりと、恍惚と笑って、彼の隠し持っている結婚指輪を先生の気づかない所で撫でた
○＊*『甘味没収！！』*＊○
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨上がりのcrew(プロフ) - ところで、甘味没収のときのセンラさんは夢主ではなく他の人と結婚をしていたのでしょうか、、、？隠し持っていた結婚指輪と書いてあったので、、、 (2019年7月16日 0時) (
レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください！！ (2019年7月16日 0時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
