【莉犬】世界は色づく、君の笑顔で/かのこゆり ページ25
小さいころから勉強勉強。
大学生になったら研究研究。
たったそれだけだった私の人生を変えてくれたのは、
子どもみたいに無邪気で素直で、子犬みたいに元気な男の子だった。
研究所から、隣の棟にある自分の部屋まで歩いていく。
ここは、秘密の施設が集まった「存在してはいけない場所」
世間には公開されていないけど、国はこっそりいろいろな研究や開発を進めている。
「父がこの施設の責任者」という単純な理由で、私はここで生まれ育ち働かされている。
誰もやりたがらない、猛毒の研究。
毒を開発してはマウスに投与して、反応を調べてレポートを書き提出して、の繰り返しの毎日。
がちゃり、と鍵を開けて部屋に入る。
そのとき、
「おかえりなさいっ!!」
赤い色をした「何か」が私に飛びついてきた。
思わずバランスを崩して後ろにひっくり返ってしまう。
思いっきり床にぶつけてしまった背中のケガを確認するより先に、飛び込んできた「何か」を確認する。
パッと見た感じは、どこにでもいる元気な小学校高学年〜中学一年生くらい。
でも、よおく見るとたくさんの違和感に気づく。
小学校のとき使った絵具の「あか」みたいな色をした、不自然なほど鮮やかな髪の毛。
琥珀みたいに透き通った、右目。
ぶどう味のあめだまをゆっくり溶かしたみたいな色をした、左目。
極めつけは、ぴょこぴょこと忙しなく動く耳としっぽ。
どんな図鑑にも、本にも、犬の耳としっぽが生えた男の子なんて載ってなかったはず。
「はじめまして…!今日から、一緒のお部屋に住むことになったよ、よろしくね!」
…こんなにもまっすぐな笑顔で言われたら、何言われたって許しちゃうよ。
「誰かと一緒に住む」なんてしたことないから、何をどうしたらいいのか全く分からない。
というか、いきなり自分の部屋から飛び出してくるって普通なのかな?
なんておかしなことを考えている間に、その子は床から起き上がると、部屋の中に走っていった。
部屋にやってきた父の話によると、「遺伝子研究所」の研究で生まれた子らしい。
人間と動物の遺伝子を使って、両方の特徴を持った生物を生み出す。
そんな、普通の感覚では絶対にやってはいけない実験をやっていたのか。
無表情でそんなことをさらりと口にする父に、寒気がした。
「人間」と「犬」をミックスして生まれた第一号、それがこの子なんだそうだ。
小学生にも見えるけど、一応17歳らしい。
…見えない。かわいい。
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雨上がりのcrew(プロフ) - ところで、甘味没収のときのセンラさんは夢主ではなく他の人と結婚をしていたのでしょうか、、、?隠し持っていた結婚指輪と書いてあったので、、、 (2019年7月16日 0時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください!! (2019年7月16日 0時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
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