花と恋文。【usss】 (ページ2)

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壱　不慮ページ2

A視点

不慮の事故だった。

信号待ちをしていた夫婦に、スピード違反の車が突っ込んできて。逃げられるはずもなく、夫婦は即死。

それが、私の両親だった。ただそれだけ。

これから親戚と暮らしていくのかな、なんて。
不謹慎にも、葬式前にそんなことを考えていた。

でも、現実はそんなに甘くなかったみたいで。

「あの子達の子なんて、誰が引き取るのよ。」

聞こえてきたのは、そんな声だった。

「うちは駄目よ。小さい子がいるもの。」

「こっちもごめんよ。だって、あの子達は___。」

良好だと思っていた家族仲は、すべて偽りだったらしい。

両親の眠る前で、延々と言い争いを続ける親族たち。
信じていたものが、崩れ去っていって。

気づけば、葬式場を飛び出していた。

耐えられなかった。

大好きな両親を亡くして、家族は偽りで。

もう、何も信じられないと思った。

外には大粒の雨が降り注いでいて、体にも雨が打ち付ける。上着は濡れ、もう使い物にならない。

頬を伝っていたのは、はたして雨だったのか。

胸に渦巻く感情のまま、叫んだ。
怒りとも悲しみとも言えぬ激情が、私を蝕んでいった。

いつの間にか、声は出なくなっていた。

雨も、先程よりは弱まっている気がした。

戻らなきゃ。

重たい足取りのまま、私は来た道を戻った。