◇ ページ12
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夕日が青かった海を橙色に染め､波打つ度にキラキラと輝きを放っている｡
ざぶんっと波の音が木霊し､するりと耳に入ってくる｡
会いたかった彼は私の頬を撫でたまま､嬉しそうに目を細めて笑う｡
彼の瞳もキラキラと光っていて､まるで海みたい｡
｢すてきな『こえ』ですね｣
なんて､甘く囁くように言うからきゅ､と心臓が苦しくなる｡
ポロポロと溢れて止まらない涙と､久しぶりに聞く自分の声｡
ようやく声が戻ったのに､深海くんにこんな声を聞かせたくないと押し殺しながら涙を流す｡
ポタッと地面に落ちた涙をはじんわりと広がっていく｡
｢なかないで｣
｢深海くん…､わたし…わたしね…っ｣
声が出なくて苦しかった日々｡
深海くんと会えて､世界は色付いて前よりも輝いて見えた｡
｢すき｡深海くんが､好きなの｣
もっと､深海くんに溺れていたいって思えるほど｡
ずっとすき｡初めて会った時から､好きだった｡
嗚咽混じりで､上手く発音ができない声でそう言う｡
声が戻った私はもう『人魚姫』なんかじゃない｡
彼の隣にいる事すら許されないかもしれないけれど､傍に居たいと思うのは､悪い事なのだろうか｡
｢ふふっ､にんぎょひめさんは『なきむし』なんですね｣
冷たい指先で私の涙を拭う｡
泣き虫なんかじゃないよ｡
ただ､なんとなくで溢れるソレを止める術を知らないだけ｡
嬉しくて泣いてるのかすらも分からない｡
それでも､深海くんに触れて貰えるなら泣き虫でもいいかなって､馬鹿みたいにそう思えてしまう｡
深海くんという海に溺れてから､こんなことばっか考えちゃう｡
恋は盲目って､本当だったんだね｡
｢ぼくもすきです｣
｢嘘だ｣
｢うそじゃないですよ｡ほんとうに『すき』です｡ずっとかんがえちゃうくらい｣
嘘って言ってよ｡
もっと､もっと欲深くなっちゃう｡
愛して欲しいって思っちゃうし､もう離れたくないって思っちゃう自分が嫌なの｡
でも､嬉しくてまた溢れたものが止まらなくなる｡
夢じゃないんだって｡私だけが好きじゃないんだって｡
あぁもう本当に､深海くんは私を掻き回す｡
｢ぎゅーって､だきしめもいいですか？｣
｢うん｣
意外と力強く抱きしめられ､トクントクンと音を立てる鼓動が伝わってしまいそう｡
このまま､冷たい彼に溶け込んでしまいたい｡
好き、大好き｡ずっと､好きです｡
この想い全部伝わってしまえばいいのに｡
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むに - めちゃくちゃ良かったです！ ただ、あんのてい？って書いてあったところが誤字なのかなぁと気になってしまいました…。多分案の定(あんのじょう)と書かれたかったのかなと…、作品はとても素敵でした！ (4月29日 5時) (
レス) @page14 id: 624c087a05 (このIDを非表示/違反報告)
薔薇(林檎飴)(プロフ) - ぷかちゃん最推しなのでこういう作品本当にありがてぇ…可愛いです… (2020年10月11日 0時) (レス) id: 1b3bd211bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：rice | 作成日時：2020年10月4日 17時
