アメジストを守る黒曜石 Ⅱ (ページ44)

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第87話あんどページ44

【エマside】

マルクとクリスも渡れてあとは6人だけ。

よし、このペースならママにも本部にも気づかれる前に対岸(あっち)へ渡って姿を消せる。

大丈夫、いける。

「次ジェミマ、おいで！」

このペースなら────

「エマ……どうしよう……。手が……」

絞るように声を出しながら涙を流すジェミマ。

ガクガクという音が聞こえそうな程に酷く震えた手足が、恐怖を物語っている。

……しまった、マズい。

1番恐れてたことが起きた。

「ごめんなさい……ごめんなさい。下が崖だって思ったら……もし“落ちたら”どうしようって……」

「落っ……！！」

更にジェミマの不安な言葉にラニとトーマまで体を震わせた。

どうしよう……どうすればいいんだろう。

訓練の時は何も無い野原だったし、どんなに訓練して自信がついたと言っても底なしな崖を渡るのは初めてなんだ。

怯えて当然。5歳(最年長)のジェミマなら尚更だ。

このままじゃ渡れない……。

「大丈──」

「大丈夫」

「大丈夫だ、一緒に渡ろう」

そう言ったのは、Aよりも先にジェミマを抱き抱えたレイだった。

いつもAに向けるような優しい眼差しでジェミマを見つめ、優しく頭を撫でる。

「エマ、さっき皆を引き上げた時のロープあったろ。それで俺とジェミマを固定してくれ」

「あっうん！」

言われるがままにロープを取り出してレイとジェミマの体に巻き付ける。

降下の手順は見て覚えたというレイはハンガーを手に持ちロープの間に通した。

「じゃあ行くぞ、ジェミマ」

レイの足が塀から離れると同時にAが祈るように手を握る。

けど、反対側で待機していたドンが受け止めたのを確認すると、Aが安堵の息を吐く。

「……良かった」

祈るように握られた手が解ける。

暗くて表情はイマイチ分からないけど、きっと笑っているんだろうな。

「A、行こう」

「……うん」

ラニとトーマも対岸へと渡れたのを確認して、ハンガーをロープに引っ掛けてAを呼んだ。

残ったのはAと私だけ。

なのにAは微動だにせず反対側を見つめ、まるで何かを待っているようだった。

「何かあるの？」

「……なんとなく、ね」

「？？」

反対側のドンが灯をチラつかせる。

なかなか来ないから心配してるのだろう。

ここで立ち止まる訳にはいかない。

私はAの腕を強引に引っ張った。