アメジストを守る黒曜石 Ⅱ (ページ5)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:64,662 hit

第49話からんこえページ5

【イザベラside】

Aは私の手を握って離さない。

私はただ引かれるがままについて行くことしかできなかった。

一体、どこに連れていくつもりなの……？

「もうちょっとだよ！」

なんて弾んだ声で笑うA。

連れてこられた場所は────

花壇。

綺麗に手入れをされた、私の大好きな場所。

子供達と大事に大事に育てている花が咲く。

────けど、今はちょっぴり寂しく感じるわね

寒さに近づくと、花は蕾を閉じ来世に身を託す。

既に11月の上旬。夏に植えた花は既に枯れて、秋に備えて植えた花でさえ、咲いてはいるけど色が悪く枯れかけているものばかり。

「ほら！ママここ！」

けど、Aが指さしたのは花壇じゃなくて、花壇の横に置いた鉢植えだった。

私はゆっくり歩きだし、Aの指さす鉢植えに目を向ける。

そこには、ちっちゃく花を咲かせた“カランコエ”があった。

「アンナと私で見つけたの！今年も咲いてくれたよ！」

「やったねママ！」とAは私に抱きついた。

そのままAの興奮はおさまらず、「やったーやったー！」とまるで幼い子のように私の周りを飛び跳ねる。

「さ～い～た！さ～い～た！カランコエが～また～さ～いた～！！」

少し外し気味におかしな歌まで歌いだす。

どこまでもちっちゃい子みたいなAがおかしくて、遂には笑いが堪えられなかった。

「あっ！ママ今絶対私の事馬鹿にしたでしょ！？」

「馬鹿になんかしてないわ。ただ、ちっちゃい子みたいにはしゃぐAが可愛くってついね」

「私もう11歳だもん！ちっちゃい子じゃないもーん！」

「ふふ、そうだったわね。ごめんなさい」

私はほっぺを風船みたいに膨らませ唇をとんがらせるAを……その細い体をぎゅっと抱きしめた。

「ほら、笑って。カランコエ(この花)みたいに」

ママに天使のような笑顔を見せて頂戴。

Aの温もりを感じながら、鼓動を感じながら瞼を閉じると、昔の思い出が蘇る。

大好きな人。大好きな歌。大好きだったハウス。

そして、大好きな私の可愛い子供達。

「ねぇ……ママ」

「ん？なぁに？」

「また“来年も”咲くといいね、カランコエ」

「……えぇ、そうね」

来年も、この先も、ずっと咲きますように────