アメジストを守る黒曜石 Ⅱ (ページ30)

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第74話むかつくページ30

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「なんでそこまでして飲ませてぇんだよ」

「お水もったいないから」

「じゃあお前が飲めよ」

「それじゃ意味がないからお兄ちゃんに渡そうとしてるんでしょ。頭いい癖に────」

なんでそんなこともわかんないの？

と、まるで俺を煽るかのような口ぶり。

本当にこいつはAなのか。

髪の毛をガシガシ掻きむしるのと一緒にため息がでた。

────ああ、ムカつく

そこからは衝動任せだった。

距離を徐々に詰めてAを近くの本棚に追いやった。

横に手をついて逃げ場を無くし、殺す気で睨みつけると、さっきまでの威勢はどこにいったのか、Aは唇を噛み締める。

コップの中の水も微かだが震えていた。

子鹿のように震えるAだが、目だけは俺を捉えて逃さない。

紫色の綺麗な瞳が、今はとても憎らしかった。

「お前、ほんとになんなの？ふざけるのも大概にしろよ……」

“叩くぞ”

それは、今まで出した中で1番の低い声だった。

Aは聞いた事のないそれにビクッと肩を震わせた。俺を見る目はかすかながら潤んでいる。

けど、紫色はまるで絶対泣くもんかと訴えているかのようで、無償に腹ただしい。

どんなに脅してもAは決して怯まなかった。

「お前に何が分かんだよ……」

こいつが1度言ったら聞かないのも知っている。

だからこそいつも俺が折れるんだ。

言い合いするのも面倒だし、そんなことにプライドも何もないから。

けど、今回はそんなガキの喧嘩とはワケが違う。

「なんにも知らない癖にいつも呑気にヘラヘラ笑って……。俺がどんな思いで“6年”を過ごしてたかも知らないくせに……」

「こういう時ばっかりしゃしゃり出てくんじゃねぇよバカA！！！！」

気づけば俺はAの胸ぐらを掴んでいた。

水の入ったグラスが音を立てて床に落ちる。破片が俺らの足元を無残に散った。

「お前が呑気なせいで……お前が……ッ！！！」

頭じゃわかってるのに。

Aは何も悪くないのに。

口は、手は、止まらない。

────違うだろ、俺が弱かったからいけないんだろ

八つ当たりをして何になる。

元は俺が弱いから…………

「ノーマンは……ノーマンはっ！！」

「ノーマンがどうしたの？」

「ッ……！！！」

「ノーマンが“どうしたの”……？お兄ちゃん」