アメジストを守る黒曜石 Ⅱ (ページ23)

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第67話そんざいページ23

【ノーマンside】

ありがとう……か。

“里親(しゅっか)が決まった”僕に弟妹が言ってくれた言葉が何度も頭を駆け巡る。

お祝いしたいみんなの気持ちが嘘じゃないのが分かってるから、嬉しかった。

けど、辛いって気持ちはやっぱりあって。

「…………」

自分のベッドに腰かける。

広い広い部屋に、僕一人。

ここで過ごす、最後の夜。

レイから受け取った発信器無効化装置を見つめて、思うことはさっきの事だった。

『みんなの中にノーマンがいなきゃ嫌だ！！』

思い出してはまた涙が零れそうになる。

けど、それを必死に堪えた。

袖でゴシゴシ目を擦って上を向いた時だ。

「──！！」

部屋のドアが乱暴に開かれ大きな音が響いた。

突然のことにビックリして、上げてた顔が必然的にそっちに向いてしまう。

見られぬよう、持ってた装置を背中に隠した。

ドアを開けた主は走ってきたのか息が荒かった。

顔は見えない。

けど、キラキラと輝く長い黒髪を持つ人はこのハウスに1人しかいない。

僕は静かに名前を呼んだ。

「……A？」

肩で呼吸をして、今にも酸欠を起こしそうなAは胸を抑え、何度も何度も深呼吸を繰り返す。

けど、深呼吸さえも苦しそうで、こっちの息が詰まりそうだ。

こんなAは見たことがない。

そのままにするわけにもいかず、僕は心配になってAに歩み寄る。

「おいで」

「………………」

背中に手をおき、ゆっくりとエスコートしながら僕のベットに座らせた。

せめて呼吸だけでも整えてあげたくて「大丈夫、落ち着いて」って囁きながら背中を摩ってあげれば、ゆっくりだけど確実に本来の呼吸を取り戻す。

「落ち着いた？」

「…………」

小さく首を縦に頷かせるAの手はとても冷たくて、震えていた。

「お水飲む？」と尋ねてみるけど、首を横に振るばかりで何も言ってくれない。

そんな沈黙がしばらく続いた。

「…………ノーマン……」

やがて、Aが振り絞ったように僕の名前を呼んだ。

繋がれた手にポタリと何かが落ちて、それはスーッと流れて落ちていく。

「ノーマン……ノーマン…………」

その声は徐々に嗚咽が混じられた。

握られる手にも力が籠って、まるで僕の存在を確かめてるみたい。

その小さな体を抱きしめようと手を伸ばし────

「死なないで…………ノーマン」