Story27 メイザース=アグリッパ ページ27
その頃――。
メ「もーっ。緇鳥Aはどこー? 挨拶したいんだけどー」
メイザース=アグリッパ――通称メイが、うろちょろしていた。
メイは対戦する前に必ず相手に挨拶をする。それが彼女なりの礼儀だからだ。
キョロキョロしていると、日本人らしい艶のある黒い髪に、透き通るような水色の目をもった中性的な人物が眼中に飛び込んできた。
メ「ちょっと、もうこんな時間? はやく行かなくちゃ――って、あれれ? あれ緇鳥Aじゃない?」
一人でぼそぼそ言いつつ、メイはその方向へと小走りで向かった。
それに早速気付いたのか、その人物は一旦立ち止まり、きょとんとした顔でこちらの到着を待っていた。
メ「ぜぇ、ぜぇ……」
メイが膝をついて息をしていると、その人物が「だ、大丈夫ですか?」と声をかけてきた。
メ「大丈夫、大丈夫。
あ、わたしはメイザース=アグリッパ。メイって呼んでね」
貴「ああ、メイさんですか。僕は緇鳥Aといいます。今日はよろしくお願いします」
緇鳥Aは頭を下げた。なんて礼儀のいい子なのだろう。これが日本人特有の礼儀のよさなのだろうか。
メイは感心しつつ、どこか警戒していた。
ふと、思い出したことをそのままきいてみる。
メ「Aって桃羽稚の弟子なの?」
貴「その肩書きやめて下さい」
ニコリと浮かべていた笑みが、一瞬にして心の底から不快そうな顔に変わった。眉をよせ、眉間が深くなっている。
貴「僕は彼女から、人を見くびることなんて教わっていないので」
メ「え……?」
メイは、一回桃羽稚と対戦をしている。けれど、彼女はいつだって本気で挑んできた。彼女が手加減などするはずがないのだ。
だからこそ、今のAの発言は衝撃だった。
メ「稚が、手加減を?」
貴「はい」
Aは一礼して、その場をさっさと去っていってしまった。
▽▼▽▼
○メイザース=アグリッパ
女子No.6、総合No.12。ブレーダー界の歌姫。
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