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「まだできてないの。もうちょっと待って」
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くるりと振り向き、俺の唇に人差し指で掬った生クリームをのせた。
悪戯に笑うA。
生クリームを舐めると、いかにもスイーツ、って感じの甘さが口に広がった。
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「……これ甘すぎじゃねえ？」
「そう？ これくらい普通じゃないの？」
「さあ……普通の定義は分かんないけど」
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また指で掬って。今度は自分の唇に押し当てる。
「そんなに甘くないけど？」ってとぼけた顔して下から俺を見上げる。
妙な下心を隠すように、腕に力を込めた。
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「これからチョコ混ぜるでしょ。絶対甘いじゃん」
「えー……潤、甘いの嫌いだっけ？」
「嫌いじゃないけど……」
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甘ったるすぎると歯止めが利かなくなりそう。なんて言えるはずもない。
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「もうちょっとだから、ちょっと待ってて」
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もうしばらくこうして、Aを堪能しようかと思っていたら突き放される。
一番楽しんでいるのはAみたいで、俺のことなんてちっとも見えていない。
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……それでも、俺のためならいいか。と思えてしまうくらい愛しい。
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白い湯気を立ち上らせたやかんのお湯をポットに注いで、いそいそとコーヒーを淹れる。
その横でAは、生クリームにチョコを混ぜながら微笑んでいる。
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楽しそうだ。
それを見ただけで俺の気持ちも幾分か弾んだ。
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作者名：義経櫻 | 作成日時：2015年6月13日 23時
