◆バースデー・キス◆ 【*ars・BD*】 (ページ4)

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「ごめんね、キッチン占領してて、」

「いつものことだろ？気にすんなって」

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髪を撫でたら、また嬉しそうに眉を垂らした。

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買い置きしておいたパンと、コーヒーをさっと淹れてテーブルに座る。

ここからはよく、キッチンの中の様子が見える。

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パタパタと落ち着かない様子であれこれやっている姿が可愛くて、口許が緩んでしまう。

それをコーヒーを飲むフリをして、隠した。

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コーヒーにはミルクも砂糖も、何も入れてないはずなのにひどく甘い。

きっとそれは、流れてくるチョコの匂いと穏やかな空間のせい。

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俺はずっとAを見ていたのに、Aは一瞬たりともこちらを見なかった。

Aの集中力は侮れない。

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見つめていたらいつの間にか

食い終わっていたパンの袋を小さく畳みながら、空のカップを持って立つ。

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ごみの日は明日だから……ごみ箱の蓋を開けたらそれなりの量が入っていた。

こんな生活感のあるものに気付くだけで、ああ、一緒にいるんだなって強く実感する。

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ポットを覗いたら、もうお湯が殆ど入ってなかったからやかんに水を入れて火にかける。

生クリームに、溶かしたチョコを混ぜようとしていたAを、後ろから抱き締める。

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……やっぱり、いつもと違う香りだ。甘美すぎる。