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冷たいコーヒーが喉を落ちていくのをゆっくり感じながら、Aに微笑みかける。
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出逢ってくれてありがとう、俺のかけがえのない人になってくれてありがとう。
……なんて口にしたら上手く言えなくなっちゃうから、言わないでおく。
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「どーぞ、召し上がれ」
「ん。いただきます」
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俺が手を合わせるのを満足気に見つめる。
やっぱり、すぐ食べてほしかったんでしょ……というのはケーキと一緒に飲み込んだ。
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ふわふわしたスポンジが、甘さを抑えたクリームを纏っていてほどよい。
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「んまいね」
「そ？ よかった、ありがとう」
「おれこそ……ありがとう。いつも大したこと誕生日にしてあげられないのに」
「大したこと？ してるじゃない、十分毎年祝ってもらってるけど？」
「そーだっけ？ ……覚えてね、や」
「さっきから覚えてないことばっかだね」
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Aの声は、すごく綺麗なんだ。
話し声だって十分心地いいのに、たまにキッチンとか部屋から聴こえるハミングは眠気を誘うほどに。
優しく包まれるような安心感があって、その声を聞くたび癒されて、幸せな気分になる。
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さすがに会話のない空気に耐えられなかったのか、テレビを付けると流れていたのは音楽の番組だった。
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「あ、新曲出るんだってね」
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そういえばAが好きなアーティストだったな……グループ名を見てぼんやり思った。
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作者名：義経櫻 | 作成日時：2015年6月13日 23時
