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「……今度で何年、だっけ」
「結婚してまだ4ヶ月だけど」
「Aと会ってからだよ。いつだっけなあ」
「さあね。だいぶ前じゃない？」
「10年は前？ あん時おれいくつだっけ……」
「知らないよ。私が智くん知ったの、それよりもあとだったし」
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滑らかな指先に存在感を示すそれを確認するように何度も撫でまわし、手を繋ぐ。
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少し冷え性で、冷たい指先を包み込めば二人分の体温が重なってちょうどいい。
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初めて手を繋いだ時も、そうだった。
Aの冷たい指先に触れた時はとても驚いたのを、今でも鮮明に覚えていた。
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初めて出逢った時のことはぼんやりとしか思い出せないのは何故だ。
自問自答しても薄らいだ記憶を取り戻せるはずもなく、流れていくのは現実の時間だけ。
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「……冷めちゃったね」
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俺に淹れてくれたコーヒーに口を付けて、ぼそりとそう呟いた。
「おなか空かないの？」俺を見上げながら小さく首を傾げて、笑う。
それだけなのに幸せな気持ちでいっぱいになるから、顔が緩んで止められない。
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「ケーキ、食うよ」
「こんな朝っぱらから？」
「朝っぱらじゃねえじゃん、もう昼だよ」
「分かったけど。胃もたれとかしないでよ？」
「ふふ。Aこそ」
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年が同じってだけで湧く安心感と、なくなっていく遠慮や距離感。
確か初めて話した時に思ったのはそれだった。
今でも思うことなんて数え切れないほどあるし、一緒にいる時間が長くなるほど違う価値観が生まれてくる。
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作者名：義経櫻 | 作成日時：2015年6月13日 23時
