◆バースデー・キス◆ 【*ars・BD*】 (ページ13)

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「ていうかいつから起きてたの？もう寝ぼけてないみたいだけど。寝癖は直してないのに」

「寝癖関係ねえじゃん。つか、いつもだし、」

「いつもだけどね？いつにも増して酷いよ。梳かしても直らないし」

「いつもだべ、」

「ううん。いつもはね、指入れるとさっと流れるの。で、まとまるのね。でも今日はそれがない」

「もー……いいよそれで。分かった、今日のおれの寝癖は酷い」

「うん。それでよし」

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いつまでも、優しい手つきでさわさわと俺の髪を撫でているから少しうとうとしてしまう。

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誕生日だから、って限定的なことじゃなくて普段からそうやって優しい目で笑ってくれる。

ずっと聞き惚れていたい、低めの透き通った声が耳元でずっと流れてくる。

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カウンターに戻していたコーヒーカップに触れると、熱は持っていなくてぬるかった。

湯気が立たなくなったのもだいぶ前だし、きっと限りなくアイスコーヒーに近いんだろう。

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「……そうだ。ご飯だったね」

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いつの間にか背中に回っていた指先がぱっと離れて、温もりが離れていく。

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冷蔵庫に添えられた指先をじっと見つめながら、茶髪の長めの髪に手を伸ばした。

ぱたん……冷蔵庫の扉が閉められて、冷気が俺たちを包み込む。

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動かない左手を探れば、薬指にはめられた銀色のそれに引き寄せられる。