◆バースデー・キス◆ 【*ars・BD*】 (ページ11)

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○いつまでも聴かせてその歌を○　【S.O＊BD】ページ11

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どこからかふんわりと聴こえてくる歌声に誘われて、俺はその扉を開けた。

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見渡したリビングのどこにもAはいないから、声を辿ってキッチンを覗く。

そこから聴こえるハミングは、聞き覚えがあるのだけれど記憶を手繰ることができない。

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何の歌だったかな、と壁に凭れて考え込んでいたらその綺麗な声が止んだ。

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「智くん。おはよ～」

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そっと笑った口許から白い歯がちらちらと見えて、一瞬目が合ったのにすぐ視線を戻す。

「おはよ、」なんてワンテンポ遅れて返したってもう一度こっちを向いてくれるはずもない。

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「じゃーん。ハッピーバースデー、智くん」

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Aのことばかり見つめていたから、何の作業をしているのか全く気付かなかった。

真っ白なクリームで覆われたケーキが俺に差し出される。

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皿を持つ綺麗な指先はピンと伸びていて、

……思わずそっちばかりに目が行ってしまったなんて言ったら怒られるかな。

ムラ一つないコーティングのそれは、Aの手作りみたいだ。

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「おぉ」

「今日は早いね？いつもならまだ起きてこないのに」

「んー……なんつーか、ね。起きちゃったからしゃーない」

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何がおかしいのか、くすくす目を細めながらケーキを置くと俺の髪をやんわり撫でた。