僕と君の世界 (ページ24)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:3,185 hit

03 ページ24

.

例えば仮に、彼に彼女ができたとして、

それに「おめでとう」と笑って言う覚悟はしていた。

俺なんかがいくら好きだってどうしようもないことくらい、分かり切っていたから。

でも――でも、自分へと向けられる親愛は、持て余してばかりだ。

特別だと言われるのが、親友というポジションに収められるのが苦しくてたまらない。

.

.

「どした？ニノ。顔色悪くない？」

「あ……」

.

顔を覗き込まれて、嫌な予感がした。呑み込んだはずの言葉が、せりあがってくる。

.

.

「潤くん、ちょっと」

「ん？ニノ？」

.

.

俺よりも体温の高い彼の手首を握って駆け出す。

戸惑う声も全部無視して、駅へと続く歩道橋を駆け上った。

「ニノ、どうしたの」

軽く息切れする俺とは対照的に、余裕そうな顔で俺に手首を握らせたままにする彼。

心の中がぐちゃぐちゃで、少しでも気を抜けば、自分の感情が無作為に溢れそうだ。

.

「ごめん、俺……潤くんの親友にはなれねえや」

.

.

愛しい体温を手放す。余韻の残る指先で髪をぐしゃりと握って、醜い表情を隠す。

.

「は、なんで」

「好きなんだよ、俺。潤くんが。友達とかじゃなくて」

「え……」

一度口に出してしまえば、あとに残るのは

抱えきれないほどの後悔と潰されそうなほどの懺悔だけだ。

「何、言って、」

「ごめん、もっと早く言っとけばよかった」

「……」

.

.

これで、最後だ。

指先を握り込んで覚悟を決める。

今まで彼と過ごした時間は、俺には贅沢すぎた。

.

「ごめん、――好きだよ」

.

.

苦しげに眉を顰めて視線を逸らした彼の表情を、俺は、一生忘れない。

.

・* End. *・