Astilbe 3 (ページ33)

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そんなピンクの桜の下で俺はきみにもう一度出会えたんだ。

高一の春休み終盤。

春休みはずっと入院していてその日はちょうど退院の日だった。

おばあちゃんが退院の手続きをしてくれている間、待合室のソファーに座りながらどうせまたすぐに入院なんだろうなとぼんやり考えていた。

すると、見覚えのある女の子を見かけた。

見間違いかと思った。

だってこんなところにいるはずがない。

でも、なんとなくあの時の子じゃないかって。

俺はおばあちゃんに先に帰っててと言い残すと慌てて女の子の後を追った。

女の子は橋の上から河原に咲く桜をどこか悲しげな目で見ていた。

たしかあの子は左耳の方が悪いと先生が昔言っていた。

今はどうかわからないけれど、俺は女の子の右後ろに立った。

『桜、好きなの？』

そう声をかけた。

ちょっと驚いたようにこっちを見る女の子。

名前を聞くと西野Aと答えた。

A、やっぱりこの子だ。

あの日からずっとずっと会いたかった。

Aちゃんは俺のことは覚えていないみたいだった。

無理もない、あの時俺はマスクしていたから。

Aちゃんと河原で桜を見ていたのはほんの少しだったと思う。

不思議なことにこの時の俺はまたすぐにAちゃんに会える気がしていた。