Astilbe 3 (ページ29)

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いじめだとすぐにわかった。

あの子を傷つける人たちにすごく苛立った。

自分の大切なものを壊されている感覚だった。

でも、

『いったい、』

こんな時に何もできない自分が一番イライラした。

突然心臓の痛みに襲われてその場にうずくまった。

すぐ目の前にいるのに、

俺を助けてくれた声を持つあの子が。

今度はあの子が怖い目に遭っているから俺が助けなきゃいけないのに。

薄れゆく意識の中、先生たちの騒がしい声を聞いていた。

伸ばしたこの手はあの子に届かなかった。

『先生、難聴ってなに？』

結局病院に逆戻りして夏休みはまた入院することになってしまった俺はお見舞いに来てくれた先生に尋ねた。

『人よりも耳の聞こえが悪いことだよ』

『Aって名前の子もそうなの？』

『ああ一組のあの子のことか、そうだね。あの子の場合は左耳の方が悪くてね、こんなふうに人によって症状や程度は違うんだよ』

だからか、

だからあの子は俺と話している時に、何度も聞き返したりしてたんだ。

それが原因で友達がいないって言ってたのか、

あの子は全然おかしくなんかないのに。

『そういう人たちはどうやってお話しするの？』

『補聴器っていう機械を耳につけたり、手話という方法で会話したりするんだよ』

手話、あの子もできるのかな。