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『おばあちゃんも先生もそんなこと俺に言わないけど、もうダメなのかなってわかる。』
『最近ずっと身体がおかしいのっ。わかるんだ、いつ死んでもおかしくないって』
命の限界を誰よりも強く感じているんだね。
『死にたくない、けど。もう辛いっ、』
私はずっとこの声を聞き逃していた。
生きたいのにそれを脅かすたくさんのものが辰哉君をこんなにも苦しめる。
そんな怖い世界にひとりぼっちになんて、絶対にさせない。
「辰哉君」
辰哉君の震える手をぎゅっと握る。
ちゃんと聞こえたよ、辰哉君の本当の声が。
「ほら見て?泣いてなんか、ないでしょ?」
泣かないよ。
辰哉君の前では絶対泣かない。
辰哉君だってまだ泣いてないから。
やっとひとつだけ教えてくれた辰哉君の秘密。
でもまだたくさんあるでしょ?
「辰哉君、まだ聞きたいことあるよ」
『さっきひとつって言ったじゃん』
「泣かなかったご褒美だよ、!」
『ずるい、』
ずるくても良い。
秘密をたくさん持ってる辰哉君が悪いんだもん。
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作者名:てぃら | 作成日時:2022年9月9日 19時