Astilbe 3 (ページ15)

今日:12 hit、昨日:1 hit、合計:31,572 hit

112 ページ15

『ごめんね、検査の時間少し遅らせようか？』

『いや、大丈夫です。今、今行きます。』

看護師さんが私たちに気を遣ってくれたのに、ベッドから降りてしまう辰哉君。

きっと私たちと一緒にいるのが嫌で逃げたんだろう。

『ちょ、ふっか！？』

渡辺君はそんな辰哉君に顔を引き攣らせた。

看護師さんに本当に良いの？と気にされてもコクリと頷く辰哉君。

何だか悲しい、

「そ、それなら明日も来るよ！覚悟しててね！」

病室を出て行く辰哉君の背中に向かって叫んだ。

辰哉君は黙って行っちゃったけど、

『おいおいあいつ頑固すぎだろ、あいつが一番往生際悪いじゃん。』

口を尖らせる渡辺君。

『これからはさ、嫌がらせみたいに毎日来てやろ、』

辰哉君がいなくなった病室でククッと笑った春香ちゃん。

この時もう私たちの心は落ち着いていた。

辰哉君の全てを受け入れられる、そう思った。

やっと見つけることができた私たちの大切な大切な人。

たとえ辰哉君にどんなことがあったとしても、

もう絶対に逃がさないと誓い合った。