ラナンキュラス5 (ページ3)

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朝
布団から手を伸ばし鳴り響くアラームを止めると
眠い目を擦りながらゆっくりと布団を剥がして
冷たい空気を感じながらスリッパに足を通す

「さむっ」

温度計を見ると2℃と表示されていて
寒いわけだと納得

さっきまでは暖かい布団と
アラームの音にも負けずに寝続けている
光輝くんの体温でぬくぬくだったけど
出かける用意もしなきゃいけないし
幸せなその場所に戻るわけにもいかなくて
椅子にかけてあった
私には大きいフルジップのパーカーを羽織って寝室を後にした。

テレビから流れるニュース番組の音声を聞きながら
キッチンでお湯が沸くのを手を擦りながら待っていると
ふわっとあったかい体温に包まれる

『Aちゃん、おはよぉ』

んーって言いながら後ろからギューっとしてくる
光輝くんの目はほとんど開いてない

「おはよ、光輝くん。
　まだ寝ててよかったのに」

『そうだけどー。
　だって目が覚めたらAちゃんいないんだもん。
　寂しいじゃん』

肩に乗せた顔をあげ
私の耳に顔を近づけると
冷た！って声をあげて私にフードを被せて紐を絞って
服の上から温めるように摩ってくる
少しすると温度を確かめるように
クンクンって光輝くんは鼻先を耳に近づけた

「ちょっ…くすぐったい」

『ふふっ、ん、あっかくなった。
　Aちゃんすぐ冷えちゃうんだもん
　俺があっためてあげないとねー』

ゆらゆら揺れて
へへって笑う光輝くんは幸せそう
このままで居るのも悪くないなと思った時に
バチンと音がなってお湯が沸いたことが知らされる

「光輝くんお湯沸いたから」

離れて？と続けようとしたけど
ヤダヤダって離れてくれない
大きいわんこ

『ダメ！Aちゃんの匂い堪能してんの！
　同じ洗剤で洗ってるはずなのにすっごいいい匂いなの！
　だから離れたくないの！』

なにを言い出すんだこの子は。と思ってると
用意するんじゃ離れないといけないじゃん！って言葉を続ける光輝くん。
分かってるならわがまま言わないで？

「ねースープ飲みたいから。」

『じゃあ、Aちゃんがスープ飲んでる間
　くっついてていい？』

顔を覗き込んできてうるっとした目で訴えてくる。
この目に弱いんだ私は

「…もー仕方ないなぁ。いいよ？」

いいよ。と答えた瞬間本当に嬉しそうで
手を引かれソファーに座って
さぁと手を伸ばそうとすれば

『あ、おはようのチューしてない』

　
その一言でスープが冷めたことは
言うまでもない。