ラナンキュラス5 (ページ14)

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誰もいないデスクに一人
自分の画面がだけが煌々と光り、
打たれた文字が右へ左へと動いていく

コトっと小さな音ともに机に置かれた暖かいコーヒー
誰？とその姿を確認するため画面から目を離すと

『Aせーんぱい、やっぱり居たー』

隣の長瀬くんの席を引き
背もたれに顎を乗せて笑顔を向けていたのは
大好きな彼

「光輝くん？！」

『へへっ、来ちゃったー
　Aちゃんから帰ったよってメッセージ来ないから
　まだ会社にいるのかな？って』

やっぱ俺の読み通り！ってうんうん頷いてる

「もう少しかかりそうだよ？」

『全然待つし！それ終わったら一緒に帰ろ？』

光輝くん一緒に家に帰り
もう遅かったから軽くご飯食べて
寝る準備ができた頃にはもう日は跨ぎそう

後からお風呂に入った光輝くんは
ソファーに座っていた私を見つけると
近づてきて肩に顎を乗せて擦り寄ってくる

『Aちゃん、寝ないの？』

「んー、寝るよ」

平日の夜。
いつもだったら寝る準備ができたら先に寝室にいく私だけど
今日はどうしても光輝くんと一緒が良くて
お風呂から出てるのを待ってたんだよね

立ち上がると光輝くんから出された手
その手をそっと握ると
ゆっくりと引かれて向かった寝室

ベットに体を沈ませて
光輝くんから降ってくるおやすみのキスをして
背中から抱きしめられると胸の中に幸せが広がっていくけど
今日は、光輝くんの胸の中で眠りたい

「ね、光輝く…『Aちゃん。今日で最後だね。』

途切れ途切れで聞こえる光輝くんの声
強まる腕の力。
冷たくなる私の肩
どうにかして彼の方を向こうとするけど

『今だめ。こっち向かないで』

悲しい涙でも悔しい涙でもないのはわかってる
優しくて愛に溢れた涙だって

明日、私は黒田になる。
だから今日で恋人なのも最後。
光輝くんからプロポーズされて数ヶ月
待ちに待った日

「ねぇ、光輝くんお願い。
　光輝くん顔、見たいよ」

少しすると弱まる力
体を向けると涙でぐちゃぐちゃな光輝くん
いつも私にしてくれるように指で涙を掬って
もう愛しくて大好きで幸せて
ギューっと自分の胸に閉じ込める

「光輝くん。いつも幸せにしてくれてありがとう」

『っ…当たり前…だし、
　俺、Aちゃんのこと、
　大好きすぎて…もう』

胸元に擦り付いてくる彼を
胸に抱きながら迎えた恋人としての最後の時間は
彼と出会えて、
彼と一緒になれて
本当に本当に良かったと思える大切な時間になった