ラナンキュラス3 (ページ47)

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多分今まででこんなに必死に
走ったことをないんじゃない？ってくらい必死に走った。

Aちゃんの家に付いて上がった息を家の前で整えて
お揃いのキーホルダーがついた鍵を使って家の中に入る。

入って直ぐ気づいた。
あ、これは…って。

いつも俺がAちゃんの家に行く時はきちんと掃除してあって
俺の前ではもう少し素でいてくれていいのにって思うくらいなのに
乾いた洗濯物はソファーに放り投げてあるし
Aちゃんが大事に育ててるはずの観葉植物は元気がない。

こっちは後だ。今はAちゃんが優先
眠ているだろう寝室のドアを開けると
抱き枕にピタッとくっついて眠ってるAちゃん。

ベットサイドに静かに座って覗き込むように顔を見ると
自分の目に水分が溜まっていく

『バカ、バカバカAちゃんのバカ。』

こんなこと言ってる俺もバカ。
なんで会いに行かなかったんだろう。
別に休日に会えなくたって、
昼休みちょっと会いに行くとか平日だって顔見に行くくらいできたはずなのに
Aちゃんのこと邪魔しちゃいけないって思ったし
俺も我慢して頑張ってるAちゃんを支えてあげたい
頼りにされたら直ぐ飛んでいけばいい。
そう思ってたのが悪かったんだ。

少しやつれたその頬に手を伸ばしてそっと撫でる。
いつもは愛しくて近づきたくて手を伸ばすけど
今は違う。
ただただここに存在してるAちゃんに
触れたくなっただけ。

『Aちゃんのバカ。』

『なんでいってくれなかったの？』

『Aちゃんから俺に会いにきて？って言って欲しくて
　言われるまで会うの我慢しようって思ったから
　Aちゃんが倒れるまで気づかなかったんだ。』

『約束したじゃん。我慢しちゃダメって。
　いつでも飛んで行くよって言ったのに
　なんで今日も連絡してこないの？俺って頼りない？』

眠っててAちゃんには聞こえてないのに
抑えきれずに溢れ出す言葉。
けど涙は流しちゃダメだと必死にこらえていると

「…光輝くん、ごめんね」

俺を見て悲しそうな顔をしながらごめんねと俺にいうAちゃん。

『よかった。よかったよAちゃん…』

そんな姿を見たらもう堪えきれなくて
溜めていた涙をこぼしながら呟いた。